渡邊人事労務パートナー事務所便り23年8月号をお届けします。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
電話番号
(従業員)「この時季に休暇を下さい」
(社長)「この忙しい時に困る!」
さて、どうしたら良いでしょう。


夏は従業員が夏季休暇を取得する時期となります。業務繁多な状況にもかかわらず夏季休暇等の休暇を申請した従業員に会社はどうしたら良いでしょうか。8月号では有給休暇を中心として取り上げました。 

◆有給休暇は本来従業員の申告で成立
 従業員が会社に休暇申請する社内書式で、「休暇お伺い」「休暇お願い」の表題を用いている会社もあると思います。勿論これでも構いませんが、労基法上は、有給休暇は従業員の申告のみで成立するため、「休暇お届」が法の趣旨に叶う表題といえます。つまり、有給休暇は会社の承認を必要としないものとされております(「時季指定権」と称します)。

◆業務繁多時の会社の対応策「時季変更権」
 どの会社でも従業員に休んでほしくない業務繁多時季がありますが、この時季に休暇申請を行う従業員も時にはおります。この場合会社は「時季変更権」を行使することができます。「時季変更権」とは従業員の休暇申請に対し「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる(労基法39条第5項ただし書き)」ことです。
簡単な言葉では、この時季に休暇申請者に休まれると会社が回らなくなるから、別な時季に代替して休むことの要請を行うことです。
 「事業の正常な運営を妨げる場合」については多くの裁判例がありますが、個々の事例ごとに、事業の規模・内容、労働者の担当職務、業務の繁閑状況、代替要員確保の困難さ等が総合的に判断されております。

時季指定権と時季変更権の流れ

従業員:休暇申請(時季指定権)・・・事業の正常な運営に支障発生の時 → 会社:休暇時季の変更(時季変更権行使)→ 従業員が別な時季を決定し休暇取得


 ◆休暇の利用目的
 労基法は休暇の利用目的について特に規制しておりませんので、従業員は休暇を自由に利用できるという原則があります。このため、会社は休暇の利用目的を理由に時季変更権を行使することはできず、また、従業員も休暇取得に際し利用目的を明らかにする必要はないとされております。

◆休暇多寡を人事処遇に勘案してよいか?
 休暇取得で問題になるのが、休暇を多く取得している従業員に対し、皆勤手当、賞与、昇格等の人事処遇で不利益取り扱いが許されるかどうかということです。
 労基法136条では、有給休暇を取得した従業員を不利益に取り使ってはいけないと規定されておりますが、これは会社の努力義務に止まると解されております。つまり公序良俗に反するような不利益取り扱いなら話は別ですが、社会通念上正当な範囲で休暇取得状況を人事処遇で勘案することは許されることとされております(年休取得者に対し皆勤手当・安全手当の減額・不支給をしても公序に反しないとした判決があります。練馬交通事件 東京地裁平成16年)。常にぎりぎりの人材で業務を回している事業主であれば休暇の多寡を人事処遇に勘案することは自然な心情と思われます。

◆計画年休について
  計画年休とは、労使協定により、年次有給休暇の取得時期を予め計画的に設定する制度です。お盆の時期における事業所一斉休業のパターンの他、班別交替制付与や、計画表による個人付与等があります。事業所の効率運営や休暇の取得促進・連続取得効果が想定されます。
 ただし、計画年休を実施する場合でも、従業員の自由裁量で利用できる日数を少なくとも5日は残す必要があります。また、年休日数が不足している従業員を計画年休の対象者とする場合には、その者の休暇を増加させることが必要です(年休の権利がない者を計画年休に組み込んだ場合には、計画年休の間休業手当の支払いが必要となります)


雇用促進税制がスタートします。
従業員の雇用増をお考えの企業はご活用下さい。


平成23年度の「税制改正法」が6月30日に公布・施行されました。厳しい経済環境下での雇用を促進するため、雇用増に取り組む企業の税負担を軽減する「雇用促進税制」3項目が創設・拡充されました。この中で特に注目すべき、従業員数を増加させた時の税制優遇制度をご案内いたします。
厚労省による労働市場活性化政策は主に助成金を通して行われておりますが、今回は雇用増を税額控除に結び付けるという新手法であり注目すべきものと思われます。雇用の増加計画がある会社は節税効果の観点からご活用をお勧めします。
(概要)
 1.税制優遇が受けられる企業
 従業員を1年間で10%以上かつ5人以上(中小企業は2人以上)増やすなどの所定の要件を満たした事業主に対し税制優遇が行われます

2.優遇される金額
 法人税額(個人事業主の場合は所得税)から 従業員増加1人当たり20万円の税額控除が受けられます。

3.申請手続き
 この優遇措置を受けるためには、目標の雇用増加数などを記した「雇用促進計画」を、事業年度開始後2カ月以内に管轄のハローワークに提出することが前提です。「雇用促進計画」が目標に達しない時でもペナルティーはありません。8月1日から受け付けを開始します。
 ただし、事業年度の開始が平成23年4月1日から8月31日までの間にある事業主は、10月31日まで受付期限を延長します。

     当事務所から一言
 先日短い期間ですが台湾を訪れました。これで、香港・上海・北京・台湾と漢民族の主要な大都会の土を踏んだことになりますが、それぞれの気候・風土・文化の違いをまざまざと感じております。出来れば更にワンラウンドしたいと思っております。

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