税制適格年金便り4月号をお届けしています。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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          政府が労働者派遣法改定を閣議決定

本年1月号の事務所便りで労働者派遣法改定を取り上げましたが、この3月19日に同法の改定が閣議決定されました。   

2008年9月のリーマンショックによる未曾有の不況で社会問題化したいわゆる「派遣切り」を解消する政策ですが、製造業を始めとした企業に大きな影響を与える改定となります。本改定は労働者の立場に比重を置き全体バランスを失した改定と私には思われます。

現在派遣労働者を活用している企業では直接雇用への切り替えを行うか、既存の戦力による残業、あるいは外注などの対応策を余儀なくされることとなります。

労働者派遣法が厳格化されると労働力需給体制が硬直的になることや、直接採用切り替えによる企業の人材募集コストの増加、そして派遣労働を選好したい労働者の就業機会を奪うなどの弊害が多く想定されます。

また、本件の諮問機関である労働政策審議会答申で解禁される筈であった「事前面接」(派遣先企業と労働者が受け入れ前に話し合うこと)が社民・国民新党の反発で法案から削除されるなど論議の多い法案となっております。「事前面接」が法案から削除されたことに対し、同審議会は厚生労働大臣に対し4月1日付で異例の抗議をしております。実際私の企業勤務時代の経験では派遣労働者と事前面接があればお互いに有益であろうと感じておりました。

◆改定内容の注目点  改定内容の中で注目すべき大きな変更点は下記の通りです。
・法改正で出来なくなること
1.製造業務への派遣原則禁止・・一部例外規定はあるものの、法令改定で製造業への派遣が禁止されれば、製造業とりわけ中小企業への影響は大きいと言わざるをえません。現在約20万人の方が製造業務へ派遣されているといわれ企業にとりその分代替労働力の手当等が必要となります。実施日は公布の日から3年以内の政令で定める日とされており、2013年にも禁止規定が発効される見込みです。

2.登録型派遣の原則禁止・・登録型派遣とは、派遣事業会社が予め労働者を登録しておき、派遣を行う段階で労働者と雇用契約を締結する(即ち派遣が決まるまで労働者は労働契約が無い)ものをいいます。

派遣事業会社と労働者が常に雇用契約を維持する常用型派遣と異なり、登録型は労働者が不安定な立場に置かされるため、一部例外を除き原則禁止対象となります。

しかしながら、登録型派遣はこれまで短期・一時的な労働受給機能として有効に機能していることや、労働者側も登録派遣を望む者が多い中において法令で禁止すること自体適切か疑問があります。禁止対象となる現在の登録型派遣者は約24万人(製造業派遣を除く)といわれており企業にとりその分代替労働力の手当等が必要となります。

実施日は公布の日から3年以内の政令で定める日とされており本来は2013年から発効のところですが、企業や派遣労働者への影響を勘案して更に2年間の暫定措置(即ち2015年までの政令で定める日の実施)とされております。

・法改正でみなし雇用申込規定が新設
違法派遣の場合における直接雇用の促進・・違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れている派遣先企業の場合、派遣先会社は派遣労働者へ労働契約を申込んだとみなす規程が設けられます。即ち違法派遣労働者を受け入れた会社は、その労働者に雇用契約を申し込んだとみなされることとなります。派遣で受け入れたつもりが社員雇用に転じることであり、事業主にとり怖い話となります。安易に違法派遣を受け入れることは重大な問題に繋がりますのでご用心が必要です。
 実施日は公布の日から6カ月以内の政令で定める日とされており、自社の派遣受け入れがこのみなし規定に抵触していないことの早急な点検が必要です。

           雇用保険制度が改定となります

従業員を雇用する企業にとり、雇用保険加入が強制されることは言うまでもありませんが、この3月31日に雇用保険法が改定され、主要改定事項について4月1日より実施されることとなりました。

 主な改定内容は次の通りです
1.非正規労働者の雇用保険適用範囲拡大(1週間で20時間以上の労働を前提)

(従来)6カ月以上の雇用の見込がある者
(改定)31日以上の雇用の見込がある者
    
これは雇用保険適用対象労働者を拡大するための改定であり、昨年度に「1年以上」から「6カ月以上」に改定されたばかりですが、更に本年には適用期間を「31日以上」に短縮しております。

 この規定の運用では「31日以上の雇用が継続しないことが明確である場合を除き被保険者要件に該当する」とされ、事業主には雇用保険加入者増の改定となります。

2.雇用保険料率の改定(引上げ) 賃金締切日が4月1日以降の賃金から雇用保険料率が改定(引上げ)となります。これは雇用保険料率を構成する、
(1)失業給付に要する料率と、(2)雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)料率がそれぞれ引き上げられたことによります。

例えば一般業種の場合、これまでの1.1%から1.55%となり、0.45%の引き上げ(事業主負担引き上げは0.25%)となります。

(例)年間賃金支払い額が1億円の企業の場合、雇用保険料率改定による事業主負担増加額は25万円となります。



                当事務所より一言
先日北京に行って参りました。
旅の眼目である万里の長城を実際訪れたところ、急峻な山の稜線にはるか彼方まで延々と続く長城が見え、是非も蘊蓄もなく只々その存在に驚嘆した次第です。

また、北京市内は日本以上に看板文字の氾濫ですが、画数の多い文字はほとんど略字化されております。漢字文化を守っているのは、今となっては日本ではないかとも感じました。

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