税制適格年金便り6月号をお届けしています。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫

顔面やけど労災補償で男女差があることをご存知でしたか?・・・京都地裁で違憲判決

労災補償でも性差のあるものがあります
労災事故は起きない、起こさせない心がけと事業場の安全確保が何より重要なことは言うまでもありません。しかしながら、不幸にして発生した男性従業員の顔面やけどの労災補償給付事件において、現法令では労災補償給付額に男女差が設定されており、その法令は憲法第14条(法の下の平等)に違反しているという京都地裁判決(平成22年5月27日判決)が出ましたので今回の事務所便りで取り上げました。

具体的な給付額の差額
労災事故で障害を被った被災従業員には障害補償給付が支払われます。障害補償給付は労災保険法施行規則別表1障害等級表にあてはめ給付額を決定します。最も重度の1級(両眼失明等)から軽度14級(1手小指欠損等)まで14級に分けて定められております。
重度の顔面やけどの障害等級では、女性は7級(「女性の外貌に著しい醜状を残すもの」)に該当し、他方、男性は12級(「男性の外貌に著しい醜状を残すもの」、ただし、本事例は併合して11級相当)と男女で異なる給付額が設定されております。
具体的な給付額で見てみると、給付の基礎となる一日当たりの給付基礎日額を2万円とすると、女性(7級)では毎年262万円(131日分)の年金が給付され、男性(本事例の11級)では一時金446万円(223日分)に止まります。また、7級の場合最低でも1,120万円(560日分)が補償されるため被災労働者がこの受給金額に達する前に死亡したときは、差額が遺族に支払われることとなります。
本来このような補償給付とは無縁であることが一番良いのですが、万一受給の事態となったときには被災男性従業員は言うまでもなく雇用事業主もこの補償給付額の性差の問題に直面することとなります。

京都地裁の判断
本件労災事故は、精錬会社に勤務していた男性従業員が平成7年11月溶けた金属をかぶってやけどを負い、胸や腹、ほほに傷あと(障害)が残ったものです。管轄労基署は被災男性従業員の障害等級を11級と認定しましたが、この男性が「女性なら7級を受けられた筈だ。男女差別だ」として京都地裁に提訴したものです。
京都地裁は今回適用した障害等級表について「年齢や職種、利き腕、知識などが障害の程度を決定する要素となっていないのに、性別だけ大きな差が設けられている」として、「この差を合理的に説明できる根拠は見当たらず、性別による差別的扱いをするものとして憲法第14条違反と判断せざるをえない」と結論付け、被災男性労働者の申立てを認めました。

京都地裁判決をどう評価するべきか
男女差別が許されないことはもはや社会常識となっており、現代は男女差別の残っている法令や慣習が徐々に消滅していく過渡期とも思われます。男女賃金差別訴訟や、交通事故逸失利益の男女格差訴訟もこの流れの中にあると思われます。
そして、今回の障害等級表の男女別決定も男女差別問題(この場合は逆差別)の俎上にとうとう上った感があります。障害等級表を主管している厚生労働省も本判決を受け検証を行うことも想定されます。
しかし、男女平等が原則とは言いながらも、こと顔のやけどに関しては、女性が受ける肉体的苦痛のみならず精神的苦痛は男性以上に大きいことは一般的に肯定できることであり、必ず同一であるべきとまで言えないのではないかと私は思います。今回事件の問題はむしろ障害等級が女性7級、男性12級と余りにも等級乖離が大きすぎることにあると思います。

育児介護休業法改定への備えは大丈夫ですか?・・本年6月30日施行です
育児介護休業法改正について
育児介護休業法が平成21年7月1日に公布され、本年6月30日から施行されます。育児介護休業法の特徴は、子供の成長過程に応じた就労規制と育児のための夫婦間の就労調整が絡むため大変肌理細かく複雑な法令となることです。また、事業規模(常時100名以下労働者の企業)によっては2年間の猶予期間が設けられております。

育児介護休業法のポイント
赤字項目は全ての企業が本年6月30日から実施を求められるもの青字項目は従事100名以下労働者の企業は2年間猶予されるものです ここでは、とりあえず改定のポイントだけを記載しますが、いずれにしても就業規則の改定が必要です。なお、就業規則改定の際、労使協定を締結することで、入社1年未満の者や週労働時間2日以下の者等を適用除外できる事項もありますのでご注意が必要です。

1.パパママ育休プラス(改定)
(現行)親が子の1歳まで育児休暇を取得できる        
(改定)両親合わせて1歳2カ月まで育児休暇を取得できる
   
2.子の看護休暇(改定)
(現行)年間5日まで取得できる  
(改定)子1人につき5日、年10日を上限に変更

3.所定外労働の免除(義務化) 3歳に満たない子を養育する労働者から請求があれば所定外労働を免除しなくてはならない
4.所定労働時間の短縮措置(義務化)
3歳に満たない子を養育する労働者から請求があれば所定労働時間を短縮しなくてはならない 
5.介護休暇(新設)  
家族1人につき5日、年10日を上限に新設



当事務所から一言
   
最近の育児介護休業法改定を見るとこれから子育てをする夫婦にとっては、大変心強い国の支援と感じ入ります。34年前、長男が生まれるときに産気付いた妻を病院に送り届けてから出社したときに上司である課長から、「お前が生むのか!」と一喝されたことが今は何故か懐かしく思い出されます。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫

このページの先頭に戻る