渡邊人事労務パートナー事務所便り8月号をお届けします。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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まだ先の話だ・・・
 (本当に大丈夫ですか?)


中小企業には労働法令の強化や厳格化は遅れてやってきます。でも備えは必要です
中小企業に対する労働法令等の強化や厳格化は大企業から数年遅れて実施されるものが多くあるため、まだ先の話だと安心してしまう傾向にあります。そのため気付いたらもう実施が目前に迫っている事態も想定されますので社内の備えはやはり必要です。株式取引の世界には「まだはもうなり、もうはまだなり」という格言があるそうですが、労働法令の強化や厳格化では「まだはもうなり」の心構えが望まれるところです。
事務所便り8月号では、最近の主要な労働法令の強化や厳格化がある中で、現在中小企業に実施猶予が行われている法令改正を取り上げましたのでご参考に願います。

労働基準法の改正
1.改定内容
赤字が中小企業に対する猶予事項)
(1)1か月60時間を超える時間外労働に対する法定割増賃金率の引き上げ:
   現行25%→改定50%
(2)代替休暇制度の創設:
   上記法定割増賃金率引き上げ分の
   割増賃金支払いに代えて有給休暇
   を付与する。


(3)特別条項付き時間外労働協定で、限度基準告示上の限度時間(例えば1か月45時間、1年360時間)を超える時間外労働に対する割増賃金率について法定率を超える率とすることの努力義務
(4)年次有給休暇の有効活用:労使協定により、1年に5日分を限度として年次有給休暇を時間単位でとることを可能にする。
2.適用猶予される中小企業
  中小企業基本法における中小企業と同義
3.猶予の時期
  大企業は平成22年4月1日実施。中小企業は実施3年後の情勢により判断

1月60時間の残業とは、平均的な会社(午前9時勤務開始で8時間労働、休憩1時間)では毎日午後9時位まで労働している計算になります。貴社でこのような社員が多くいる場合には、時間外労働割増賃金率強化への対策が今後必要になります。


育児介護休業法の改正
1.改正内容
  (赤字が中小企業に対する猶予事項)
(1)所定外労働の免除の義務化
 3歳に満たない子を養育する労働者から請求があれば所定外労働を免除しなくてはならない。
(2)所定労働時間の短縮の義務化
 3歳に満たない子を養育する労働者から請求があれば所定労働時間を短縮しなくてはならない 
 (3)介護休暇(新設)
    家族1人につき年5日、年10日を上限
(4)パパママ育休プラス
   (現行)親が子の1歳までの育児休暇を取得できる→(改定)両親合わせて1歳2カ月まで育児休業を取得できる。
(5)子の看護休暇
   (現行)年間5日まで取得できる→
   (改定)子1人につき5日、年10日を上限
2.適用猶予される中小企業
  常時100名以下労働者の企業
3.猶予の時期
  大企業は平成22年6月30日実施
  中小企業は平成24年6月30日実施

育児介護休業法は、子供の成長過程に応じた就労規制と育児のための夫婦間就労規程が絡むため、大変肌理細かく、また複雑な法令となっております。気付かない間に法律違反になることもありますので注意が必要です。

障害者雇用の改正
1.改定内容
障害者雇用促進法では「障害者雇用率制度」が設けられており、常用雇用労働者数が56人以上の一般事業主は、その常用雇用労働者数の1.8%以上の障害者を雇用しなくてはなりません。また、法定雇用率(1.8%)を下回っている一定規模の企業には、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、不足1人分につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければなりません。この納付金を納めなくてはならない企業の規模が毎年厳しくなっております。

納付金を納めなくてはならない企業の規模
(1)従来:常用雇用労働者数が「301人以上」の事業主が対象(昭和52年以降)
(2)平成22年7月以降:常用雇用労働者数が「201人以上」の事業主が対象
(3)平成27年4月以降:常用雇用労働者数が「101人以上」の事業主が対象
(注)201人以上、および101人以上の事業主
   に対する納付金は減額特例(5万円→4万円が適用されます)

今後中小企業にとっても障害者雇用は避けて通れないこととなります。法令上止む無く雇用するスタンスではなく、一定の戦力として雇用し、同時に障害者を雇用することで得られる助成金を利用することも一つの選択肢かもしれません。


当事務所より一言

今月とりあげました法令は全て厚生労働省の管轄です。厚生労働省は、労働者が過重な残業がなく、また、育児介護が心おきなくでき、そして障害者の方にも適切な職場を与える政策作りのため余念なく法律作りに勤しんでいるのでしょう。
 その一方、霞が関で働く国家公務員の2009年度の残業時間に関する調査結果によると、旧労働省が1人当たり月平均73.4時間で1位、旧厚生省が71.7時間で2位と厚生労働省官僚がなんと残業時間のトップとなっています。
 早く帰らせるための政策を作るために一番遅くまで残業しているとは皮肉な滑稽噺となりますが、最近の厚生労働省はその他にも難問山積であり、すぐに帰れない状況はさもありなんと思われます

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