渡邊人事労務パートナー事務所便り9月号をお届けします

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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年金確保支援法案が成立(8月4日)

◆年金確保支援法とは
 年金確保支援法は皆様にはあまり耳慣れない法案と思います。しかしながら、この法案は私達の老後保障にとって意義のある法律であり、今月号でご紹介いたします。本来もっと早い時期の成立を目指しておりましたが、政治の混迷の影響で2年以上も先送りされ、今回ようやく日の目を浴びた年金法案です。

◆年金確保支援法で変わること(主要事項)

1.国民年金の追納可能期間が、2年間から10年間に延長となります(3年間の時限措置)。・・・老後に年金を受給するためには、最低25年(300カ月)の加入期間が必要であり、未納期間が長い方は最悪無年金となっておりました。追納を可能とすることで無年金者の救済が図れます。
*施行日:本年10月1日までの政令で指定する日

2.企業型確定拠出年金法の一部改定
 今回マッチング拠出が認められることとなりました。これまで企業型確定拠出年金の退職金ファンドは会社拠出のみでしたが、従業員もファンドを拠出(これをマッチング拠出といいます)できることで従業員の資産形成が容易となります。
 実はこのマッチング拠出は従業員にとり大変有利な資産運用方法です。毎月の積立金にも、資産運用益にも課税されず、退職金受取段階で課税されますが、退職金課税には優遇措置が講じられており、退職金額によっては実質無税となることもあります。
 マッチング拠出の節税効果メリットの一例として、年収650万円(課税率20%)の人が毎月3万円マッチング拠出を30年間、合計1080万円拠出したとします。この金額に運用益が非課税加算され退職時に支給されます。
一方マッチング拠出なしとした場合216万円(1080万円×20%)が所得課税され、更に銀行に預けた利息にも20%が分離課税されますので、マッチング拠出の節税効果は大きいといえます。今回の改定で従業員の資産形成上有利な選択肢が広がったといえます。また、この改定に合わせて、現在60歳までとなっている加入年齢が65歳迄引き上げられることとなります。
*施行日:来年1月1日予定

3.確定給付企業年金の一部改定
 確定給付企業年金では、従来60歳以上65歳の者が年金支給を受けるためには規約に定めた受給年齢であることが必要でした。今回の改正により、60歳以上で退職の場合には規約で定めた年齢に達しなくとも年金支給が可能となりました。
*施行日:来年4月1日予定

  
◆年金制度の変革方向
 年金確保支援法の中身を通して透けて見えるのは、切迫しているわが国の財政状態において、自分の老後は自分で守ってほしいという国民に対する国の思いです。公的年金(国民年金・厚生年金)を縮減せざるを得ない現状では、極力無年金者をなくし、その一方で企業年金(確定拠出年金・確定給付年金等)による老後保障の自助努力を求めております。その意味では、各企業が社員の企業年金をどう設計するかが益々重要事項になると思われます。

どのように守る? 高齢者のお金

◆公共サービスを利用した金銭管理
親が高齢になると、日常的な金銭管理をどのように行うかという問題が起こります。判断能力が低下したり、外出が難しくなったりした高齢者の家族にとっては切実な問題です。そこで、公共サービスを利用して金銭管理を行う方法をご紹介します。

◆社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」
社会福祉協議会(以下、「社協」)は、地域福祉の推進を目的とした非営利組織であり、国・都道府県・市区町村にそれぞれ設置されています。
地域住民に身近な市区町村の社協は、訪問介護など様々な福祉サービスを手掛けており、災害時にはボランティアの受け入れ窓口となるなど、準公的な性格を持ちます。
「日常生活自立支援事業」は全国約800の社協が手掛けています。主なサービスとして、高齢者の日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助、通帳の預かりなどがあります。
サービスは日常生活の範囲内に限定されており、高額の財産管理や法律行為の代理などは行えません。 詳細は全国社会福祉協議会ホームページ(http://www.shakyo.or.jp/)「日常生活自立支援事業パンフ」の項をご参照ください。

◆安い報酬も魅力
生活費の引き出しや預け入れ、税金などの支払いの手伝いなど、小口の金銭管理サービスは、親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者において特に必要度が高まっています。また1回の訪問での利用料金が1,000円程度からという安い報酬体系も魅力です。

◆制度利用伸び悩みの理由は?
「日常生活自立支援事業」は便利な公共サービスですが、利用者数は2011年1月末時点で約3万5,000人にとどまっています。
 この伸び悩みの主な理由はサービス供給側である社協の人員不足にあると言われています。常勤職員の人件費は都道府県と国が折半していますが、予算が付かないため、人員増に踏み切れないでいるのが実情のようです。
 一方、利用する側にも、通帳などを第三者へ預けることへの抵抗感が強くあるようです。本人から利用を申し出るケースは少なく、多くは周囲からの勧めがきっかけとなっているそうです。
      
   当事務所所長より一言

 私は時折社会保険労務士として年金事務所の年金相談員のお手伝いに伺いますが、年金相談現場では日々悲喜こもごもの情景が繰り広げられております。
 先日相当ご高齢で年金を受給していない方のご相談を受け、丁寧に過去の履歴を伺ったところ、年金の受給につながりました。しかも過去からの未支給分を含めると相当な金額となり、真に感謝された次第です。年金相談員のやりがいを感じます。
 一方、年金受給年齢になってご相談に来られた方で、どうやっても年金受給につながらず、年金は支給されない事実を断腸の思いでお伝えしました。ご相談者はこの先どうして生計を立てるのか余計な事まで考え込んでしまいます。
 今回年金確保支援法が成立し無年金者救済の一助にはなりますが、やはり大切なことは公的年金保険料を滞納しないこと、企業年金のメリット等を利用して上手に老後の備えを行うことと思われます。 

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