渡邊人事労務パートナー事務所便り10月号をお届けします。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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60歳以降の就労を考える

 会社員にとり60歳は一つの転機となります。それは60歳が一般的に定年年齢のスタートでもあること、あるいは役職定年等で給与の下降開始となること、その一方では年金受給年齢ともなることです。今月の事務所便りは会社員にとり60歳のもつ意味を、雇用維持の法令、賃金減少に対する支援制度そして年金制度から考えてみます。

◆雇用維持の法令(高齢者雇用安定法)
我が国で定年を定める場合、(1)定年自体を廃止する、(2)直接にあるいは段階的に定年を引き上げ平成25年4月以降65歳定年制とする、(3)65歳までの継続雇用制度により希望者全員あるいは一定基準を満たす社員を再雇用・継続雇用する、の中から選択しなくてはならないとされております(高齢者雇用安定法)。
いかなる定年制度を採用するかは経営者にとり重要な決断となりますが、この中で多くの企業が継続雇用制度を採用しております。特に一定選考基準を設けて再雇用を判断する継続雇用制度は、労使協定を締結すれば定年年齢に達した社員をフィルターにかけて必要な社員だけを残せるいわば会社にとり使い勝手の良い制度です。
その反面、この制度はフィルターから漏れた社員の反発が大きく、社内トラブルや最悪係争事件を招致するものともいえます。東日本電信電話事件(東京高裁 平成22年12月22日判決)では65歳までの雇用を求める原告社員が高齢者雇用安定法に違反するとして会社を相手に裁判を起こしました。さらに原告社員は、「60歳以上同一企業における雇用継続は公序である」とも主張いたしました。東京高裁は原告の主張に対し、高齢者雇用安定法には私法的強制力・強行性はないとして原告の主張を退けました。しかしながら60歳での失職はやはり社員の人生設計を狂わせることであり、再雇用選考については会社側の配慮が大切と思われます。

◆賃金減少に対する支援政策
賃金体系上60歳を節目として賃金減少となる会社が多くありますが、このような時に利用出来る支援政策が、雇用保険「高年齢雇用継続給付」制度です。
この制度は、受給対象者の雇用保険被保険者期間が5年以上必要等の条件はあるものの、60歳到達以降、賃金が一定割合(みなし賃金の25%以上)の減少となった時に65歳まで支給されるものであり、賃金減少のショックアブソーバーとなっております。

(高年齢雇用継続給付金の具体事例)
みなし賃金月額45万円の人が60歳で賃金減少
新賃金   対みなし賃金   高年齢雇用継続給付金
315,000円   70%(30%減)     14,705円
292,500円   65%(35%減)     29,461円
270,000円   60%(40%減)     40,500円

60歳以降賃金減少となる会社ではこの制度を利用することで社員の賃金減少を軽減することができます。また、会社によっては、60歳以降の賃金体系に高年齢雇用継続給付金を併記表示し、実質収入を周知させるところもあります。
 
◆年金制度(在職老齢年金)
年金受給年齢になると年金事務所から申請手続き案内文書がきます。現在の年金制度では昭和28年4月1日以前生まれの方は60歳から厚生年金(報酬比例部分)の受給が可能です。
申請手続き案内文書を手にした多くの方が在職老齢年金(在職による年金減額)で頭を悩ませます。働かなければ年金だけでは生活困難だが働くと折角の年金がカットされるという苦渋の選択を迫られることとなります。この選択は60年近く人生を生きた方の労働・金銭・残された時間に関する価値観等で決定されると思われます。
現在の在職老齢年金の年金減額幅は、60歳から65歳までは厳しく、65歳以降は優遇されております(年金カットとなる基準はボーナス込み月収と年金の合計額により、65歳以前は月28万円以上、一方65歳からは月46万円以上と大きな乖離があります)。最近の新聞報道(日経10月12日朝刊)では、現行制度では60歳から65歳までの方の就労意欲を喪失させることから厚生労働省は年金カットの水準を65歳以上に揃える検討を開始したとのことです。企業団体は反発必至であり先行き不透明ですが、年金受給者の立場からは望ましい改定となります。

(年金月額10万円の人の在職老齢年金減少)
1.60歳〜64歳
月収15万円→年金支給10万円
月収20万円→年金支給9万円
月収25万円→年金支給6.5万円
月収30万円→年金支給4万円
月収36万円→年金支給1万円

2.65歳以上
上記のいずれも場合も10万円支給(カットなし)

◆60歳以降者の雇用の安定について
 現在高齢者雇用安定法があるとはいえ、60歳以上の希望者が全て働ける労働環境にはありません。厚生労働省の調査によれば、65歳以上まで希望者全員が働ける企業の割合は全体の48%に留まっております。その一方で社会福祉財源の逼迫から年金制度の縮減案が検討されております。つまり60歳になったら、職も無くなり年金もまだ支給されないという悲惨な状況が今後想定されます。65歳までの雇用確保があって初めて年金制度の見直しとなるという順序が何より重要と思われます。
 また、60歳以上の方をハローワーク経由で雇用すると出される助成金(フルタイム雇用で90万円)等を活用して、高齢者の労働市場を活発化することも必要と思われます。
〇訂正のご連絡
 先月号で案内の年金確保支援法案で訂正がありましたのでお詫びかたがたご連絡します。
国民年金保険料の追納可能期間の延長(2年から10年)の施行日について
(誤)本年10月1日までの政令指定日
(正)来年10月1日までの政令指定日

当事務所よりひと言
私の楽しみの一つがガーデニングです。秋のこの時期は植えたい花々が多くとてもワクワクします。真夏の暑さに負けず見事に咲き誇っていたポーチュラカの勢いがなくなり交代の時期となりました。色とりどりのパンジーやビオラが出番を待っています。私は買ったことがないのですが、今年はなでしこが売り切れご免となっております。お店の方によると、女子サッカーチームなでしこジャパンの影響でこれまで花に興味の無かった人まで買い求めているとのことです。花が好きな人が増えることはとても良いことと思います。
冬の定番のシクラメンも店頭に出回り始めました。純白、ローズピンク、白色の頭に赤い帯をまいたようなビクトリア種も植えました。シクラメンの魅力はその形の面白さもありますが、花の色も楽しめるところと思います。サザンクロスも趣のある花ですが寒さに弱く、去年は室内に入れても越冬できずに残念なことをしました。
思えば僅か数百円単位の金額でこれだけ心が躍り成長が楽しめるものは余りありません。
素人ガーデニングをこれからも楽しんでいきたいと思います。

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