渡邊人事労務パートナー事務所便り25年2月号をお届けします

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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アスタマニアーナでは間に合わない!!

◆法律改正はまったなし
スペイン語でアスタマニアーナという言葉があります。「また明日」という意味で、明日は明日の風が吹くから気楽にやろうとういう感じのスペイン語の挨拶言葉です。いかにもラテン系の雰囲気が漂っており、「明日でもまにあわ〜な」の響きとも重なります。しかしながら、労働・社会保険の法律改正についてはアスタマニアーナという訳にはいきません。この4月から次の通り労働・社会保険の法律改正が予定されており、まったなしのこととなります。 法令改正を明日に迎えて前日に準備することはできません。新年度に備えて事前に準備することをお勧めします。

◆新年度に予定されている法律改正
1.定年年齢を定めている会社では、本年4月1日以降これまでの64歳から65歳に引き上げなくてはなりません。就業規則の改定が必要となります。

2.継続雇用制度(継続対象労働者を一定基準でふるいに掛ける制度)を行っている会社は制度廃止が必要です。これは年金支開始年齢引き下げの影響で、60歳になり年金なし・職場なしの労働者を出さないための措置です。ただし、経過措置があります(例えば平成28年3月末までは61歳以上労働者には従来の継続雇用制度適用が可能です)。いずれにしても就業規則と労使協定の改定が必要となります。                3.障害者法定雇用率が厳格化されます。民間企業の場合、従来の1.8%が2%に強化されます。このことは、障害者雇用を行うべき会社が、常用労働者56人以上から50人以上に強化されることを意味します。
更に、平成27年4月からは、常用労働者100名以上の企業も雇用納付金制度の対象となります(現在は200人超300名以下の企業に対し、不足障害者数1名につき毎月4万円納付。つまり3名不足であれば年間納付額144万円となります)。また、障害者雇用制度は納付金を支払ったから雇用を勘弁してもらえる性格ではなく、当局からの追求は依然厳しいものがあります。
また、案に相違して軽度身体障害者の雇用は売り手市場といえます。法令強化の前に早めに手を打つことが必要です。

4.改正労働法(無期労働契約への転換制度)が施行されます。4月1日以降契約締結の有期労働契約が反復継続され、通算5年を超える時には、労働者の申し込みにより期限の定めのない労働契約(無期労働契約)に転化するため労働契約の更改管理が重要となります。仮に有期労働契約の管理不十分で契約期間が5年を経過してしまった場合には、無期労働契約のオプションは労働者の側に渡ることにご留意下さい。
現在の日本の労働契約法では、無期労働契約において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする(労働契約法第16条)」ため、一般的に解雇は困難であり雇用管理は一層重要となります。

「追い出し部屋」をご存知ですか?
◆「追い出し部屋」とは
社内から「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の設置が業績不振の企業で相次いでいるとの報道がなされ、厚生労働省が実態調査に乗り出しております。マスコミ情報では、パナソニック・NEC・ソニー・朝日生命等の名前が挙げられております。
表面上は「事業・人材強化センター」(パナソニックの例)の組織名がついていますが、実態は希望退職に応じないリストラ対象社員を集めてまとめておく部署とされております。

◆なぜ「追い出し部屋」が出来るのか
 上記の労働法改正記事で案内のとおり、現在の日本で無期労働契約者を解雇する場合よほどの理由が必要ですが、通常勤務している労働者にそのような状況はまず考えられません。苦肉の策として「追い出し部屋」を設置して本人に早期自主退職を促すものと思われます。

◆「追い出し部屋」は適法か
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の労働契約について社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。
しかし、あまりに執拗に行ったり、詐欺・脅迫などにより行ったりすれば、違法な「退職強要」とみなされてしまいます。実際に、そうした裁判例も多々あり、損害賠償のリスクや雇用契約の解消が無効とされるリスクがあります。
今回の「追い出し部屋」問題に関する企業側主張では「新たな技能を身につけたりして、他部署の応援や再配置の役に立つように」との意図からそうした部署を設置しているとしていますが、社員側は「社内失業者を退職に追い込むのが狙い」と反発しています。例えぎりぎり適法とされても、大げさな言い方をすれば労働者の尊厳を毀損することではないかと思われます。そのような会社が人の心をとらえる様な商品が出せるのか問われ結果として会社イメージにも悪影響がでるのではないかと危惧します。

近年増加している「ベランダ喫煙」のトラブル

◆「ベランダでの喫煙は違法」階下喫煙住民に賠償命令
先月号で星野リゾートの「喫煙者は採用しない」記事を掲載しましたが、先日いわゆる「ベランダ喫煙」に関するトラブルについて、非常に興味深い判決が下されました。
マンションのベランダからの受動喫煙が原因で体調が悪化したとして、5階に住む住人(70代女性)が階下4階の60代男性を相手に損害賠償(150万円)を求める訴訟を起こし、名古屋地裁は、受忍限度を超えており違法だと判断して女性の精神的損害を認め、男性に5万円の支払いを命じました。

◆双方の主張内容
男性は家族がいるときは外(ベランダ)でたばこを吸う習慣でした。一方、女性にはぜんそくの持病があり、手紙や電話で喫煙をやめるよう男性に求めたりしましたが、応じてもらえなかったようです。
男性側は、「女性の体調悪化と煙の因果関係は認められないこと」、「マンションの規則でベランダでの喫煙は禁じられていないこと」、「たばこを吸いながら景色を眺める楽しさや私生活の自由があること」などを挙げ、違法性はないと反論していました。

◆判決の内容
判決は昨年12月13日付で確定し男性が他の居住者に著しい不利益を与えながら防止策をとらないことは不法行為に当たると認めました。
原告側の弁護士は「受動喫煙を訴えた訴訟で和解例はあるが、原告が勝訴するのは極めて珍しい」と述べています。
一頃ベランダで夜間喫煙する父親がホタル族と揶揄されましたが、今後ホタルにもなれない愛煙家はお気の毒としか言いようがありません。

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