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社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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今話題となっている解雇の金銭解決制度」について

◆これから議論が本格化?
最近、「解雇の金銭解決制度」(従業員を解雇するときに企業が和解金を支払って解決する仕組み)が大きな話題となっています。数年前から議論されておりましたが、今年2月の規制改革会議で委員の1人から具体的な提案がなされて以降、議論が活発化してきました。
政府の産業競争力会議が6月にまとめた「成長戦略」に盛り込まれることは見送られましたが、今夏に行われる参院選終了後に議論が本格化するとも言われており、労働問題を抱える企業にとっては注目すべき動向となります。

◆ハードルの高い現行の「解雇」
日本の解雇法制では、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」(労働契約法16条)とされています。
また、解雇に関する判例では、事業継続困難等で行う解雇(整理解雇)の場合、4つの要件あるいは要素(@人員削減の必要性、A解雇回避努力の履行、B被解雇選定者の合理性、C手続きの妥当性)が必要であるとされ、解雇の実施は企業にとって非常にハードルの高いものとなっています。すなわち日本では使用者の都合で勝手に労働者を解雇することは困難とされております。
なお、労働者に責(詐欺、横領、刑事訴追事件等)がある場合の懲戒解雇は上記普通解雇法令とは異なり、会社就業規則の定めにより決定され取扱いも異なりますので識別が必要です。

◆賛成側・反対側の意見
解雇トラブルが裁判所に持ち込まれ、元従業員が勝訴した(解雇が不当であると認定された)場合、職場復帰が原則となりますが、元の職場に戻るのは現実的には難しいものです。
そのような場合、「和解金を支払うことでトラブルを解決する(職場復帰させない)のが妥当である」「和解金の相場がわかればトラブルの早期解決につながる」などというのが、制度導入に賛成する側の意見です。
一方、導入を反対する側の意見には、「『解雇が違法である』と裁判所が認めたのに職場復帰できないのはおかしい」「企業が『お金を払えば解雇できる』と安易に考えやすくなる」などといったものがあります。

◆制度実現には労使双方の合意が不可欠
 色々な立場の違いはあると思いますが、解雇の金銭解決制度は検討に値すると当事務所では考えております。なぜならば、仮に従業員が勝訴して職場復帰するにしても、復帰すべき職場や処遇は通常会社の裁量に委ねられます。そして、閑職等不本意な職場と処遇をあてがわれた結果本人がモラール喪失することが間々あります。これは本人にとっても会社にとっても好ましい状況ではないと思われます。このため、当事者が新たに法定される基準をもって納得のいく金銭で解決し、双方が新たなスタートを開始する選択肢もあって良いと思われます。
また、この制度の実現には、労働組合や中小企業経営者との調整が焦点となると言われています。どのような制度が企業側・労働者側の双方にとって妥協できるものなのか、今後検討を重ねる必要があると思われます。

今年度から「キャリアアップ助成金」が創設

◆有期契約労働者等のキャリアアップを促進
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者等(*)の企業内でのキャリアアップを支援する事業主を対象として支給される助成金です。
*有期契約労働者等:有期契約労働者および正規雇用の労働者以外の無期契約労働者。短時間労働者、派遣労働者を含む。

先月号で同じく有期労働契約者を対象にした若者チャレンジ奨励金(訓練期間1ヵ月毎に1月当たり15万円の支給、職場定着2年で合計100万円の支給)をご紹介いたしましたが、本奨励金は35歳未満の労働者を対象にしているのに対し、キャリアアップ助成金は年齢制限が付かないことが大きな違いとなっております。

◆当局に事前計画書を出すことが必要
有期契約労働者等の正規雇用への転換、人材育成、処遇改善など、事業主(業種不問、事業規模の制限なし)の行う施策ごとにコースが分かれていますが、どのコースを利用するにしても当局(労働局またはハローワーク)に事前計画書を提示することが必要です。
コースの概要は下記の通りですが、この他にも、対象労働者の状況や企業の行う施策によって助成額が加算・上乗せされる場合もありますので、十分な検討が必要です。詳細については当事務所へお尋ね下さい。

◆コースの内容
下記の助成額は中小企業に適用される金額を示しております。
【正規雇用・無期雇用転換コース】
現在の有期契約労働者を、@正社員に転換する、A正社員ではないが無期労働者に転換するときに助成金が支給されるものです。
有期従業員がおり、転換によるモラールアップを図るためには有用な助成金です。転換後の給与アップ率5%が条件となります。
…1人当たり@正社員転換40万円、A無期労働者転換20万円

【人材育成コース】
Off-JT(専門学校や職業訓練校等の職場外訓練)とOJT(職場内訓練)で有期労働者をキャリアアップさせたときに助成金が支給されます。
若者チャレンジ奨励金の35歳以上バージョンと考えて頂ければ結構です。従業員をキャリアアップさせ更に1時間当たり700円〜800円の助成金受給は検討に値するコースと思われます。
…Off-JT(1人当たり):賃金助成1時間当たり800円、経費助成上限20万円
…OJT(1人当たり):実施助成1時間当たり700円

【処遇改善コース】
 全ての有期労働者の賃金テーブルを3%以上増額したときに助成金が支給されます。しかし支給額が低く賃金額増を勘案すれば余り妙味のない助成金と思われます。
…1人当たり1万円

【健康管理コース】
 法定健康診断対象外である有期労働従業員4名以上に健康診断を受診させたときに助成金が支給されます。パートアルバイトの多い職場では利用可能な面白い助成金です。
…1事業所当たり40万円

上記以外のコース
【短時間正社員コース】
…1人当たり20万円
【パート労働時間延長コース】
…1人当たり10万円

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