渡邊人事労務パートナー事務所便り8月号をお届けします

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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最低賃金が引き上げられます。

◆東京は888円(+19円)になります
 中小企業に影響のある最低賃金が引き上げられます。政府は、今年10月目途で全国の最低賃金額の引上げ方針を固めました。
引上げ幅は全国平均で16円となります。この引き上げ幅は前年度を1円上回り、また、過去20年でも2番目の大きさとなっております。
当職は職業上の必要から最低賃金を語呂合わせで覚えますが、今回の東京の最低賃金は「パパパ(888)と上がった東京」というところでしょうか。その他、首都圏では、神奈川887円(+19円)、埼玉785円(+15円)、千葉777円(+19円)となります。今回の引き上げによって、従来問題となっていた生活保護との逆転現象(最低賃金で働くよりも生活保護の方が高額となること)が全国で解消されることとなります。

◆最低賃金を基本給とする会社は要見直し
会社によっては、最低賃金を基準にした基本給に諸手当を上乗せするところもあります。例えば、基本給を14万円(≒従来の東京最低賃金869円×月間労働160時間)とし、属人的諸手当(家族手当・通勤手当・住宅手当・子女教育手当等)で6万円支給する形をとる場合、諸手当6万円は時間外手当計算の対象項目とならないため、時間外手当の軽減効果となります。同じ20万円を支給するにしても基本給を最初から20万円とする場合に比べて、基本給を14万円とすると時間外手当は30%軽減となることから、このような給与形態もあるのでしょう。
ただし、この給与形態を続ける内に、基本給の基礎となる最低賃金の上昇を看過してしまい、気付いたら法令違反の状態になることが危惧されます。最低賃金法第4条違反は罰金50万円です。最低賃金の改定の都度法令遵守の観点から見直しが大切となります。

◆今回の最低賃金改定の効果と影響
今回の16円引き上げ効果は、引き上げ率として2.1%、かたや足元の物価上昇率は3%以上となっており、最低賃金が上昇しても物価上昇に追いつかない現状です。
最低賃金で働く人は、中小企業のオフィスや工場で働く人の7%で、その多くがパート・アルバイト等非正規労働者と言われます。田村厚労相が昨年以上の最低賃金引き上げにこだわったのも、春闘の恩恵が及ばないこうした人の所得への配慮があったと言われております。

◆最低賃金では人が来ない業界もあります
本年5月の当事務所便りで「今日本は今人手不足です」のテーマで、ワタミやユニクロを取り上げました。ワタミは人手が足りず既存店を閉鎖して他店への振り分けを余儀なくされました。一方ユニクロの柳井社長は「少子高齢化により人材が枯渇する。時給千円で人が集まる時代は終わりを告げた」として販売員1万6千人を正社員にすると発表しました。
このように、業種によっては最低賃金では人が来ず、高いコストをかけてでも人材募集を行うために今回の最低賃金引き上げ影響は限りなくゼロに近いというところもあります。外食・接客販売・コンビニ等はこの傾向が顕著となっております。当事務所がある新宿付近のパート・アルバイト募集を眺めますと、セブンイレブン980円、ユニクロ1050円、吉野家1133円となっており、最低賃金での募集はありませんでした。また、コンビニ業界では個別の店舗が独自で募集しても十分な人集めができないため、別会社で人材を募集し教育訓練を行い、いわば人材プールを作って、コンビニ店舗に派遣する仕組みを作っております。

中小零細企業の「よろず支援拠点」

◆国が設置する「経営相談所」

「よろず支援拠点」は、国が全国に設置する経営相談所のことで、経済産業省・中小企業庁の「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」により設置されています。
経済産業省は、平成26年度から各都道府県に1カ所ずつ、地域の支援機関と連携しながら中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営上の相談に応えるため、このよろず支援拠点を整備することとしています。
6月2日に40拠点が開設しましたが、同月30日には新たに7拠点が開設され、全国47都道府県に「よろず支援拠点」が開設されました。
最寄りのよろず支援拠点へ直接連絡すると、専門のスタッフが相談に応じ、適切な解決方法を提案してもらえるとのことです。

◆開設に至った背景
全国385万の中小企業、中でもその9割を占める小規模事業者については、地域の経済や雇用を支える重要な存在であるにもかかわらず、その相談対応を担う既存の支援機関の、機関ごと・地域ごとに支援のレベルや質、専門分野、活動内容等のばらつきが課題となっていました。
そこで、相談体制の整備が必要ということになり、開設に至ったとのことです。

◆主な役割と具体的な業務
「よろず支援拠点」の主な役割と具体的な業務には、以下のものがあります。最近できたばかりであり、世人の評価はまだ定まっておりませんが、経営のことで困ったことがあれば、一度相談してみるのもよいかもしれません。
(1)総合的・先進的アドバイス
他の支援機関では十分に解決できない経営相談に応じ、中小企業・小規模事業者の課題を分析。解決策を提示し、フォローアップも実施する。具体的な支援のイメージとしては、売上拡大(新規顧客獲得や海外進出等)、再生・経営改善、現場改善(生産性向上)等。
(2)支援チーム等の編成支援
中小企業・小規模事業者の課題に応じた適切な支援チームの編成を支援。支援チーム編成のため、複数の支援機関、公的機関、起業OB等の「支援専門家」や、大学、大企業等の事業連携の相手先との調整。具体的な支援のイメージとしては、企業が抱える複数の経営課題に対し、適切な支援ができる機関・専門家による支援チーム編成の主導等。
(3)的確な支援機関等の紹介
支援機関等との接点がなく、相談先に悩む中小企業・小規模事業者の相談窓口としての相談対応。相談内容に応じて、適切な支援者につなぐことによる支援機関・専門家の紹介。
(ホームページはこちらをコピペください)
http://www.smrj.go.jp/yorozu/

当事務所より一言

今年第3回目となるブラック企業大賞の候補企業が7月30日にノミネートされました。「大庄」「JR西日本」「ヤマダ電機」「A-1PICTURES」
「タマホーム」「東京都議会」「リコー」「秋田書店」「智香寺学園」の9社です。そのノミネート理由は、過密勤務による過労死・自殺・うつ病発症・不当解雇、変わり種ではセクハラ(東京都)といずれも「堂々たる」受賞理由となっております。決して頂きたくない大賞です。
 ちなみに第1回は東京電力、第2回はワタミフードサービスが大賞企業となっております。

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