渡邊人事労務パートナー事務所便り27年3月号をお届けします

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
電話番号
マイナンバー!
◆マイナンバーを知らない会社でのある情景
マイナンバー法施行が周知されていない会社では、今年の10月にこんな情景があるかも知れません。

従業員Aさん「社長!私のところへ、役所から何か12桁の数字が簡易書留で送られたのですが、これは一体何なのでしょうね?」
従業員Bさん「私のところへも送られてきていますよ。Aさんの番号と比べてみましょうか?アレ〜、違いますね」
社長「実は会社へは13桁の番号が来ているんだ。これは何なのかな〜。忙しいし読むのも面倒だからとりあえず机の中にしまっておこうか・・・」

この番号こそ、マイナンバーなのです。今年の10月に市町村長が住民基本台帳に登録されている人全員にマイナンバーを付与して「通知カード」で通知するものです。登記等されている法人にも同様にマイナンバーが付与されます。そして年が明けたら早速各種申告で必要になるものであり、机に仕舞ってどこかへ行方不明になっては困る大切なものなのです。

マイナンバーは来年1月以降利用が開始となります。例えば、毎年年初に社員が会社へ提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には本人や被扶養者のマイナンバーを記載する欄が新設されます。また、会社が発行する源泉徴収票には従業員や家族のマイナンバーの記載が必須になります。更には雇用保険の資格の取得・喪失でマイナンバーの記載が開始となります。社会保険では1年遅れの再来年1月(予定)にマイナンバーが必要になるなど、今後様々な手続きでマイナンバーが必要になります。

◆マイナンバーの周知はまだまだ
 このところ、マイナンバー関係の報道が多く見られます。この3月はマイナンバー啓発月間となっている関係でしょう。しかしながらマイナンバーの社会的な周知はまだまだの感があります。日経記事からマイナンバー関係記事を抽出するとこんな見出しが出てきます。

・「マイナンバー 企業手探り(従業員の番号集
 め)(政府の周知不十分)」平成27年3月7日
・「マイナンバー厳格管理 企業に要求(委託先まで監督義務)」平成27年3月7日
・「マイナンバー 資産も把握(公平な税徴収をめざす)」平成27年3月11日
・「マイナンバー、戸籍も(18年実施検討)」
 平成27年3月15日

 内閣府の最近の調査では、マイナンバーの内容を知っている人は3割にとどまっており、冒頭の会社のようなケースもなきにしもあらずと言えます。
一方政府の周知が不十分であるために企業の方は焦っております。大企業になる程従業員から取得するデータが多くなるとともに、マイナンバー自体が機密性の高い個人情報であるため、如何に合法的な対応(取得・利用・提供・保管・廃棄)を行うか社内プロジェクトチームを立ち上げるなど大わらわの状態です。
また、企業がマイナンバーを外部業者に管理委託した場合には、委託先にまで監督義務が課せられておりますので、外部業者がやったことであり、自社は悪くないという言い逃れができないようになっております。
万一マイナンバーを漏洩した場合には、企業の社会的な信用を喪失するとともに故意や重大な過失の場合には最悪4年以下の懲役もしくは200万円の罰金あるいはその両方という厳しい刑罰も用意されております。

◆マイナンバーの特徴
 住民票を有する全員(赤ちゃんからお年寄りまで・男女全員国籍問わず)に対して指定する12桁の唯一の個人番号です(法人は13桁です)。すなわちマイナンバーが分かれば日本に居住するただ一人の人(会社)に辿り着けることになります。消えた年金問題では同姓同名や同一誕生日、振り仮名違い、旧字体の使用など照合が困難な事情が沢山ありましたが、マイナンバーではこのようなことはありえなくなります。

◆マイナンバーの意義(キャッチフレーズ)
マイナンバーの重要なキャッチフレーズは次の通りです『国や地方自治体で社会保障、税、災害分野の3分野で個人情報と紐付け情報の管理を効率的に行い、「公平・公正な社会の実現」、「行政の効率化」、「国民性の利便性の向上」の3点を実現する社会基盤です』
そして、社会保障制度と税制を一体化して、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障を充実させることとしております。これを裏読みすると、これまでは社会保障は社会保障、税は税、の別個の制度であり公平・公正な社会ではなく、真に困った人に手が差し伸べられていなかったということなのでしょう。

◆マイナンバーの今後の展開
マイナンバーは法律で定められた行政手続きにしか使えないことになっております。具体的には、現在は@社会保障(年金・労働・医療・福祉)、A税、B災害対策の三項目です。
ただし法律を変えればマイナンバーの利用範囲を広げることは当然可能です。政府の方針として、将来的には、健康保険証や印鑑登録、運転免許証等色々な機能を持たせて普及促進を図るICT国家戦略を掲げております。
また、日経記事にある通り、マイナンバーで預金者資産を把握する可能性も出てきます。現に政府はマイナンバーの利用範囲を預金口座へ適用するマイナンバー法改正案を国会へ提出しました。税や保険料の徴収には、資産の把握が必要だとして新たに預金口座への適用を盛り込み、2018年から任意で開始し、2021年を目途に義務化するか判断するとされております。預金口座を完全把握されることに抵抗をもつ人も多いのではないかと思いますし、国内・国外の資産が完全把握され丸見えになると本当にお困りになられる方もおられると思います。

当事務所より一言
  今月号はマイナンバーを取り上げましたが、マイナンバー法は個人情報保護法の特別法という位置づけの法律となっております。
今から10年前の個人情報保護法の制定時、当職は損害保険会社のコンプライアンス統括室という職場で全店の法令遵守指導を行っておりました。当然個人情報保護も新たな管掌業務となりましたが、個人情報保護法成立により職場環境が一変したことを思い出しました。

まず、それまでは代理店さんが職場内に自由に立ち入っておりましたが、これが一切禁止となりました(職場内で第三者個人情報が部外者の目に入ることを回避するためです)。受付カウンターデスクは個人情報を遮断するためパーテーションで仕切られました。重いデスクトップパソコンですら、盗難を防ぐため施錠がされました。パスワードを施さないで個人情報メールがやり取りされていないか抜き打ち検査もありました。その他様々な対策を行いましたが、やはり個人情報を保護するためには実に多くの労力が不可欠であることを今更ながら実感しております。

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