渡邊人事労務パートナー事務所便り10月号をお届けします

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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今年も最低賃金が上昇します

◆首都圏は今年も大幅アップ
最低賃金はいうまでもなく労働者が働く上での最低の賃金を定めたものであり、たとえ会社と労働者がこれを下回る賃金で合意しても無効となります。また、会社が最低賃金を下回る賃金を支払うと罰金50万円以下に処せられます。この意味では、地域の最低賃金がいくらであるかは会社でも承知しておくべき金額といえます。

今年10月1日に首都圏の最低賃金が改定となりますが、次の通り今年も大幅なアップとなりました。最低賃金をもって適用賃金としている会社は見直しが必要となります。

*東京  850円(13円アップ)
*神奈川 849円(13円アップ)
*埼玉  771円(12円アップ)
*千葉  756円( 8円アップ)

◆それでも残る生活保護水準との逆転
従来最低賃金で働くよりも生活保護を受給する方が高額となる都道府県は11ありました。つまり、最低賃金で働くよりも生活保護を受給する方が、収入が多いという不条理とも言える現象が11都道府県で起きておりました。今回の改定でも逆転現象がまだ残る都道府県は、北海道、宮城、東京、神奈川、大阪、広島の6都道府県となります。


◆最低賃金と生活保護水準との逆転理由
最低賃金と生活保護との逆転の背景には、生活保護は、家賃を一定の上限まで実費で支給する制度であり、公営住宅より割高な民間アパートなどに住む受給者の割合が増え、生活保護水準は上がっていること、その一方で、働く者の税・社会保険料の負担が増えて可処分所得は減っていること(例えば働く者は社会保険料を徴収されますが、生活保護受給者の国民年金保険料は全額法定免除となります)などが要因となっております

この問題についてはかつて第159回国会で質疑されましたが、小泉首相(当時)が答弁書で「両制度はその性格等を異にしており、また生活保護費は住宅費等勘案する要素が多く、最低賃金と生活保護の水準を単純に比較することは適切ではない。」とされております。

しかしながら、現実感覚ではやはり割り切れない思いが残ります。勿論憲法第25条(生存権・国の社会的使命)の理念は整然と実行され、真に困窮する人の生活は救済保護されなくてはなりませんが、現実には生活保護受給者が212万人と過大と思われる水準にあり、その一方で働いても困窮するワーキングプアが存在することは国として早急に是正すべき社会問題と思われます。

国民年金の新制度が開始されます
(保険料後納制度)


◆保険料後納制度とは
従来支払いが遅れた国民年金保険料は過去2年間より前は時効となり支払えないとされておりましたが、将来の無年金者・低年金者の発生を防止し、高齢期の所得確保の目的として、過去10年まで遡及して保険料を支払えることとなりました。老齢期を迎えて、思うように働けずしかも年金も支給されない悲惨な事態を回避するために、過去の年金未納期間を今の時点で回復できることがこの制度の目的です。
しかしながら、いつまでも過去10年間遡及して支払えるようになった訳では無く、3年間の期限措置(平成24年10月〜平成27年9月)に限定され、それ以降は通常通り2年間に戻ります。

◆具体的事例でのご説明 現在の年金制度では、年金加入年数が25年(300月)なければ年金は支給されません。国民年金と厚生年金や共済年金の期間を合計して300月なければ全く支給されません。つまり299月と300月の間には天国と地獄の線が引かれているといっても良いといえます。具体的な例で計算をお示しします

(例)これまでのサラリーマン期間10年(標準報酬月額20万円)、その後自営業としての加入期間14年11月・・・・加入期間24年11月(299月)で65歳を迎えたとき
1.現状(299月)での年金支給:全くなし
2.あと1月追加(300月)の場合の目安額
 (1)厚生年金報酬比例部分:約18万2千円
 (2)基礎年金部分:約49万1千円
    年金額合計67万3千円

年金加入月数が300月に満たない場合、これまでは60歳以降国民年金の任意加入か厚生年金適用事業所勤務で加入月数を伸ばしておりましたが、この後納制度を利用することで、一挙に加入月数を伸ばすことが可能となりました(勿論過去分の保険料支払いは必要です)。

◆年金制度はアリとキリギリス?
例えは悪いですが、年金制度はイソップ寓話のアリとキリギリスの様なものと思われます。年金制度では急ごしらえの実績は作れず、長い間のアリさんの様な積み重ねが必要です。一方キリギリスさんの如く年金制度に無頓着だった場合、冬(老後)が来たときには年金の支えが無く困窮します。日本は皆年金制度であり、いずれかの年金制度に加入し老後に備えることが必要と思われます。

なお、年金機能強化法案が本年8月に国会で成立したことから、平成27年10月以降は年金加入期間が10年(120月)以上で受給可能となる見込みですが、10年加入の基礎年金額は現価で約19万6千円と低額であり、やはり若年期から老齢期まで切れ目のない年金加入で老後に備えることが必要です。

所長より一言
 
 当事務所では事業主様の代行でハローワーク手続き代行をさせて頂いておりますが、各ハローワークのローカルルールでお客様にご迷惑をお掛けしてしまう事があります。東京・神奈川・埼玉・千葉それぞれにローカルルールがあります。
 例えば、求人の時の事業所存在確認が、固定電話があれば良いとするハローワークもあれば、テナント契約書まで要求するところもあります。また、離職票の交付方法では、ハローワークから直接離職者へ送るところと当事務所宛とするところもあります。更には事業主からの求人委任状を要請するところがある一方で、求人委任状をこちらから提出すると狐につままれた顔をするところがあります。ハローワークは国の行政機関であり、統一した業務対応を求めたいと思います。また、対応の親切さで芳しくありません。
 一方年金事務所の対応は過去に叩かれ過ぎたことの影響なのか緊張感に満ちております。覆面調査官も張り巡らしております。ある年金事務所へ所要で出向くと、受付女性が深々と頭を下げ「ご用件を承ります」と言われ思わず後ずさりしてしまいました。同じ行政機関でもこうも違うものかと最近感じております。

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