税制適格年金だより2月号
社会保険労務士は言うまでもなく人事労務業務が専門領域ですが、仕事を進める中で様々なことに遭遇します。
今月は人事労務業務で本当にあった珍事や難事を取り上げます。貴社でも同じようなことがないようお祈りいたします。
その1
実際あったお金をごみ箱に捨てていた話
規模の大きいある会社でのこと。障害者法定雇用率が低く所轄労働局からの厳しい改善指導を受けました。最悪のときは企業名公表までになるとお叱りをうけ手立てを尽くしてなんとか法定雇用率を改善しました。
しかしその一方で、障害者の方を雇用すると受給できる特定求職者雇用開発助成金の存在を知りませんでした。ハローワークから来る手続案内を人事担当者がなんとごみ箱に直行させていたのでした。
特定求職者雇用開発助成金は、障害者を始め就職困難者の方の就労を促進するため大変手厚い助成金が支給されます。この会社の場合当時障害者雇用1名につき約80万円、重度障害の方は約120万円のケースでした。
私が指摘し気付いた時は障害者の方をすでに10名以上採用しておりましたので本来受給できる助成金1000万円ほどの助成金が無効となった計算となります(助成金は厳格な提出締め切りがあり、あとで事情説明しても斟酌してくれません)。ごみ箱に捨てていた書類が大変な金額であった訳です。
1000万円を経営に有効活用できればその現実差額は更に広がることとなります。なんともったいない話でしょう。
その2
実際あった給与の支払いすぎ
毎週土曜・日曜が休みの週休2日制のある会社のことです。これまで会社は土曜日出勤をした社員に当然のごとく休日出勤割増(3割5分増)を払っていました。折角の休みの日で皆が休んでいるときに働かせるのだから感覚的にはおかしくないと思います。
しかし労基法上の要請は法定休日(例えば日曜)出勤に対する割増だけであり法定外休(例えば土曜日)も含めることとはされておりません。土曜日に勤務した社員には休日勤務割増は不要であり、仮にその日に8時間を超えた時間外労働があればその部分だけ2割5分割増すれば良い話です。
この会社の場合、土曜日出勤に対する休日出勤増割は最早企業内で慣例となり事業主独断で廃止することは困難です。労使協議を行い、労働者側の理解を得なければこの割増を外すことはできません。
休日出勤割増の基礎となる一日当たりの賃金を2万円としたとき、8時間労働(法定時間)した時の割増賃金は7千円となります。
この金額をベースとして、1か月に土曜出勤を行う社員がのべ100名いて年間で計算すれば約840万円も払わなくてはならいいこととなります。知らなかったとはいえ、なんと気風のよい会社でしょう。
その3
実際あったややこしい話
ある会社では「従業員が65歳を迎えた年の年度末を定年退職日とする」と就業規則を制定しておりました。しかしこれには思わぬ落とし穴があります。
4月1日生まれの方が65歳になるのは法律上では3月31日(年齢のとなえ方に関する法律)のため、就業規則通りとするならば4月1日生まれの方は働ける期間が丸々1年短くなってしまうからです。
このようなことが起こらないようにするには、例えば「満65歳となった日」等を基準とすれば良いでしょう。また、就業規則では、単に○○歳と規定してあることが多いのでこのような想定外のこともおこります。年齢についてはややこしい話があるので注意が必要です。
その4
実際あった誤解を招く話
退職金制度を改定する会社で開催された職場説明会で、人事部からのコメントは「皆様のこれまでの退職金は確保した上での改定です」でした。このコメントで社員には安堵の表情がありました。
でも実際は正確に説明する必要があります。同じ確保した退職金でも会社都合と自己都合の退社では一般的に大きな金額差があります。入社20年になる社員の場合、例えば会社都合では900万円、自己都合では600万円としたときにそのどちらを適用するのか明示することが必要です。いざ退職金を受領するときになり、こんな筈ではなかったとトラブルになります。
仮に裁判で会社が正確に説明していなかったと判断され、会社都合の支払いとされたときは、社員全体の退職金支払い額に影響が及びその金額は大変大きなものとなります。
退職金のように金額が大きくなるときにはとくに後日のトラブルを回避するため正確に説明し記録を残すことが必要です。
今月は人事労務業務で本当にあった珍事や難事を取り上げます。貴社でも同じようなことがないようお祈りいたします。
その1
実際あったお金をごみ箱に捨てていた話
規模の大きいある会社でのこと。障害者法定雇用率が低く所轄労働局からの厳しい改善指導を受けました。最悪のときは企業名公表までになるとお叱りをうけ手立てを尽くしてなんとか法定雇用率を改善しました。
しかしその一方で、障害者の方を雇用すると受給できる特定求職者雇用開発助成金の存在を知りませんでした。ハローワークから来る手続案内を人事担当者がなんとごみ箱に直行させていたのでした。
特定求職者雇用開発助成金は、障害者を始め就職困難者の方の就労を促進するため大変手厚い助成金が支給されます。この会社の場合当時障害者雇用1名につき約80万円、重度障害の方は約120万円のケースでした。
私が指摘し気付いた時は障害者の方をすでに10名以上採用しておりましたので本来受給できる助成金1000万円ほどの助成金が無効となった計算となります(助成金は厳格な提出締め切りがあり、あとで事情説明しても斟酌してくれません)。ごみ箱に捨てていた書類が大変な金額であった訳です。
1000万円を経営に有効活用できればその現実差額は更に広がることとなります。なんともったいない話でしょう。
その2
実際あった給与の支払いすぎ
毎週土曜・日曜が休みの週休2日制のある会社のことです。これまで会社は土曜日出勤をした社員に当然のごとく休日出勤割増(3割5分増)を払っていました。折角の休みの日で皆が休んでいるときに働かせるのだから感覚的にはおかしくないと思います。
しかし労基法上の要請は法定休日(例えば日曜)出勤に対する割増だけであり法定外休(例えば土曜日)も含めることとはされておりません。土曜日に勤務した社員には休日勤務割増は不要であり、仮にその日に8時間を超えた時間外労働があればその部分だけ2割5分割増すれば良い話です。
この会社の場合、土曜日出勤に対する休日出勤増割は最早企業内で慣例となり事業主独断で廃止することは困難です。労使協議を行い、労働者側の理解を得なければこの割増を外すことはできません。
休日出勤割増の基礎となる一日当たりの賃金を2万円としたとき、8時間労働(法定時間)した時の割増賃金は7千円となります。
この金額をベースとして、1か月に土曜出勤を行う社員がのべ100名いて年間で計算すれば約840万円も払わなくてはならいいこととなります。知らなかったとはいえ、なんと気風のよい会社でしょう。
その3
実際あったややこしい話
ある会社では「従業員が65歳を迎えた年の年度末を定年退職日とする」と就業規則を制定しておりました。しかしこれには思わぬ落とし穴があります。
4月1日生まれの方が65歳になるのは法律上では3月31日(年齢のとなえ方に関する法律)のため、就業規則通りとするならば4月1日生まれの方は働ける期間が丸々1年短くなってしまうからです。
このようなことが起こらないようにするには、例えば「満65歳となった日」等を基準とすれば良いでしょう。また、就業規則では、単に○○歳と規定してあることが多いのでこのような想定外のこともおこります。年齢についてはややこしい話があるので注意が必要です。
その4
実際あった誤解を招く話
退職金制度を改定する会社で開催された職場説明会で、人事部からのコメントは「皆様のこれまでの退職金は確保した上での改定です」でした。このコメントで社員には安堵の表情がありました。
でも実際は正確に説明する必要があります。同じ確保した退職金でも会社都合と自己都合の退社では一般的に大きな金額差があります。入社20年になる社員の場合、例えば会社都合では900万円、自己都合では600万円としたときにそのどちらを適用するのか明示することが必要です。いざ退職金を受領するときになり、こんな筈ではなかったとトラブルになります。
仮に裁判で会社が正確に説明していなかったと判断され、会社都合の支払いとされたときは、社員全体の退職金支払い額に影響が及びその金額は大変大きなものとなります。
退職金のように金額が大きくなるときにはとくに後日のトラブルを回避するため正確に説明し記録を残すことが必要です。
当事務所より一言
2月の行事といえばやはり節分の豆まきです。私が子供のころは自分の歳の数だけ豆を食べるよう親から言われましたが、今それをやるとなると、お腹がはき切れそうな量を食べないといけなくなりました。思えば歳をとったものです。
私の事務所のエントランスでは季節の花をならべてお客様のお出迎えをしておりますが、やはり冬の花には限りがあります。春になれば色とりどりの花が出回りますので今から楽しみです。
2月の行事といえばやはり節分の豆まきです。私が子供のころは自分の歳の数だけ豆を食べるよう親から言われましたが、今それをやるとなると、お腹がはき切れそうな量を食べないといけなくなりました。思えば歳をとったものです。
私の事務所のエントランスでは季節の花をならべてお客様のお出迎えをしておりますが、やはり冬の花には限りがあります。春になれば色とりどりの花が出回りますので今から楽しみです。