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社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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平成26年度の厚生労働省関係法改正
今年も厚生労働省関係の法改正が多く予定されております。知らなければ損をする改正や、その反面知らないと法令違反になってしまう改正がございます。主な改定の見出しだけでもご承知頂き、該当事項がでましたら当事務所へ詳細をお尋ねください。

◆産前産後休暇に係る企業・社員への朗報
社会保険加入者の場合、従来は満三歳未満の子を養育する育児休業期間に対してのみ社会保険料が免除されており、産前産後休暇に対しての社会保険料免除はありませんでした。今年の4月以降は産前産後休暇取得社員の社会保険料も免除となる法改正ができました。
例えば標準報酬月額20万円の女子社員が産前産後休暇を3か月間取得すると、本来支払う社会保険料合計は、東京都の場合で162,540円(これを会社と社員で折半負担)となります。申出書を提出することで、会社・社員とも保険料が免除となり、しかも、保険料は納付したとみなされ将来の年金給付に影響がありません。産前産後休暇社員がいる企業と社員には朗報となります。新制度を利用しない手はありません。

◆育児休業を行う社員への朗報
雇用保険加入者で育児休業を行う社員に対しては、これまで一定の条件を満たせば休業開始時賃金月額の50%が育児休業給付金として原則1年間支給されておりましたが、本年4月よりこの割合が67%に引き上げられることになりました。
例えば休業開始時賃金月額が20万円の方はこれまでの給付額は10万円でしたが、これが13万4千円に増額になります。それでもやっぱり生活が厳しいと思われますが、休業期間中の社会保険料(厚生年金保険・健康保険)は申請により免除されますし、会社から給料が支払われなければ(実際殆どの企業では給料は支払われておりません)雇用保険料も支払う必要がありません。そして育児休業給付金は課税対象ではありませんので所得税もかかりません。このように考えてみると育児休業制度利用の実質メリットは大きいと言えます。
また、この育児休業給付金は男性も取得できますので、本制度の充実は国が推奨している男性が子育てに積極参加する、いわゆる「イクメンプロジェクト」の支援強化策ともなります。

◆年金納付実績の少ない方への朗報
先月号でご紹介した通り、年金納付実績が足らないために年金を受給できないという方には、年金機能強化法は朗報となります。これまで年金納付実績は少なくとも25年間(300か月)無ければ年金は一切もらえませんでしたが、この基準が来年10月以降10年(120か月)に緩和され、年金が支給されることとなりました。勿論金額的には期間按分されるため、25年と10年では受給金額は異なりますが、たとえ10年実績でも年金が支給されることは朗報であり、救済される方も多いと思います。
派遣社員受入企業の自由度増加
 現行派遣制度では、専門業務等からなるいわゆる26業務には期間制限がかからず、この他の業務には原則1年、例外3年という規制がありました。そして、26業務とは何なのか、派遣受入業務が26業務に収まるのかという分かりにくさと原則1年という不自由さがありました。このため平成27年4月より26業務の概念を廃止して、全ての業務に共通する派遣労働者個人単位の期間制限(3年)と派遣先の事業所単位の期間制限(3年、過半数労働組合の意見を徴して更に延長可)を設けることになりました。

;">◆男女雇用機会均等法の法令違反注意>
男女雇用機会均等法で法令違反となる事例としてこれまでも間接差別がありました。間接差別とは、表面的には中立的な基準ですが実質的には性差別となるものです。
省令で定められた間接差別事例として、「総合職を募集・採用する場合に合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けること」がありました。今年7月よりこの禁止事項が「すべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けること」に強化されました。
旧来の考え方である、転勤あり(すなわち男性)が総合職、転勤なし(すなわち女性)が一般職であるという判別はもはや通用できないこととなりました。募集・採用・昇進・職種転換の場面では男女雇用機会均等法に対する従来以上の感度が求められます。

パートタイム労働法の法令違反注意 会社の身分ではパートタイマーであっても、通常の労働者と同視できる労働実態の場合にはこれまでも差別を行うことが禁止されておりますが、今後法令公布後1年以内に「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」の範囲が拡大されることになりますので注意が必要です。
(従来の同視条件)
(1)職務の内容が通常の労働者と同一
(2)人材活用の仕組みが通常の労働者と同一(3)無期労働契約を締結している
(法改正後の同視条件)
(3)「無期労働契約を締結している」を削除
正社員と同様な職務・職責をこなし、ジョブローテーションも正社員と同様に行っていながら、これまでは有期労働者ゆえパートタイマーの待遇で済ませていたような場合、法改正で有期労働者でも正社員と差別することが出来なくなりますので注意が必要です。

「ブラック企業」は社員を採用できない!?
◆世間を賑わすキーワードに 昨年末、「新語・流行語大賞トップテン」(ユーキャン)に『ブラック企業』が選ばれましたが、それに続き、日本の優れた論考を顕彰する「大佛次郎論壇賞」(朝日新聞社)に、『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野晴貴著/文春新書)が選ばれました。

◆学生から見た「ブラック企業」
「2015年度 日経就職ナビ 学生モニター調査」(調査対象:来年3月卒業予定の大学3年生)では、「ブラック企業だと思う条件」を尋ねたところ、(1)残業代の不払い、(2)過酷な労働環境、(3)離職率の高さがトップスリーでした。
なお、この調査で「ブラック企業の就職試験は受けない」と回答した学生は62.5%に上りました。    また、別の調査では、学生が就職活動を進めるにあたって企業に公開してほしいデータでは、「離職率」(59.4%)、「平均勤続年数」(51.6%)が上位にランクインしており、「ブラック企業」を念頭に置いていることがうかがえます。

◆労働条件などの見直しが必要
なんといっても自社がブラック企業であるような誤解を回避することが大切です。そのためには経営者として労働・労務コンプライアンス方針を確立することが前提となります。最後に、賛否両論あると思いますが、ブラック企業経営者として著名になったお二方の言語録を記載します。
*「無理というのは嘘吐きの言葉なんですよ」
 ワタミ社長渡邊美樹氏(テレビ東京カンブリア宮殿)
*「変革しろ。さもなくば死だ」
 ユニクロ社長柳井正氏(2011年 年度方針)

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