こんな働かせ方ありですか?
◆誤配により知った奇妙な労災事故
毎朝寝起きに日経新聞に目を通しことが私の日常ですが、11月5日の一面トップに労災事故が出ておりました。「夫の過労死 労災認定へ妻苦悩」とありました。天下の日経がこれだけ取り上げるのだから一体どのような事件なのだろうと読み進みましたが、どうも書きぶりが違うのでよくよく見たら東京新聞が誤配されておりました。
しかし、この事件は社会保険労務士として参考になると共に、我が国で副業が推奨され始めている中での事業主様の関心事でもあるので、今月号で取り上げさせて頂きます。
◆前月の残業140時間 それでも労災でない?
急性心臓まひで死亡した労働者はトラックの配送と積み卸し業務担当でした。前月の残業は140時間と過労死ライン月100時間を優に超える過重労働実態でした。通常このような過重労働に対しては労災認定が出て然るべき所、大きな問題がありました。なんと、実態は一つの会社であるにもかかわらず、トラック運転中と積み卸し作業中を別会社勤務としていたのです。
死亡した労働者はフォークリフトで積み卸し中に亡くなりましたので積み卸し会社の労働時間だけの算定となり、過労死判定に影響を及ぼします。また、仮に過労死認定がされても労災支給基準となる平均賃金も大幅に下がることになります。どうして会社はこのようなことをしたのでしょうか。
◆別会社とする目的
記事によれば、このように別会社とした会社の主張は「業務の集約と効率化が目的」とのことですが、理由は別なところにあると思います。
まずは、別会社としたこの会社の目論見は社会保険料の軽減ではないかと思います。一つの会社で支払うべき賃金を二つに分けて、一社だけ社会保険に加入させれば標準報酬月額が下がります。どの事業主様も社会保険料負担に音を上げておりますがこのやり方によれば社会保険料が軽減できます。ただし、このやり方は従業員の不利益になり正当なことではありません。
もう一つの目的は、36協定の労働時間制限を逃れることにあると思います。36協定では例えば月間45時間、年間360時間以上は労働させられない縛りがありますが、あくまでもこれは1社毎のことであり、別な会社と通算することにはなっておりません。結果的に36協定制限時間が倍となるので、人手不足解消の便法となります。しかしながら、結果として今回のような過労死事故が起きています。この様な働かせ方は従業員の健康配慮義務を行っていないことであり、正当な企業が選択すべきやり方ではありません。
◆兼業・副業ある労働者の労災適用方法
一人でも労働者を雇用している会社は必ず労災保険に加入しなくてはなりません。また、労災保険は、正社員、契約社員、パートアルバイトの身分を問わず適用されます。それでは、一人の労働者がA社とB社の兼業または副業をおこなっている場合、労災はどのように適用されるのでしょうか。
労災事故では、事故発生の企業単体のみで判断し、別会社を通算しません。例えば労働者がA社(平均賃金月額50万円)とB社(平均賃金10万円)で兼業している場合、労災基準となる平均賃金は労災が発生した会社で決定します。つまりA社の労災事故補償はB社補償の5倍という計算になります。A社とB社が隣合っていて、労働者が真ん中で倒れたら、A社と判定されやすく家族がA社側へ少し動かすなどの与太話も聞こえてきそうです。
◆今回報道の事故は労災認定されました
上記の通り労災事故は事故発生企業毎に判断することになっております。すると今回の事故はフォークリフトで積み卸し中に亡くなりましたので積み卸し会社の労働時間と賃金だけで判断することになります。しかしながら、実際は一つの会社の指示命令で労働していることや積み卸し会社には実体がないこと等の証拠の積み重ねを行い、一つの会社としての労災認定がおりました。労災認定可否判断は通常6カ月程度ですが、特殊な事案のため、労災認定に10カ月を要したとのことです。
年末の風物詩「職場の大掃除」、実は法令義務だとご存じでしたか?
◆大掃除は会社の義務とされている
仕事納めの日には社内の大掃除をする、という会社は多いのではないでしょうか。忙しい部署からは、「ただでさえ年末はやることが多いのに、掃除に割く時間がもったいない」とか、「掃除は仕事じゃないのに……」などとボヤく声も聞こえてきそうです。
しかし、実は、会社の大掃除を行うことは、法律にも定められた義務であり、立派な仕事の1つなのです。
具体的には、労働安全衛生規則第619条に、「事業者は、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。」として、「日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に、統一的に行うこと」が定められています(第1項)。
◆職場の清潔保持は労働者の義務でもある
一方、労働者にも、「作業場の清潔に注意し、廃棄物を定められた場所以外の場所にすてないようにしなければならない」ことが義務付けられています(同規則第620条)。職場環境を清潔に保つことは、会社にとっても労働者にとっても、必要不可欠なこととされているのです。
◆義務付けのねらいを理解して積極的に大掃除に取り組もう
このような義務付けがなされているのは、労働者を守るためです。オフィス内が整理・整頓されていなければ事故も起こりやすくなりますし、不衛生な環境は病気の原因ともなります。安心して働くことのできる職場環境を維持するためにも、定期的に大掃除を行って職場の清潔を保持することが大切です。
また、職場環境をきれいに保つことは、仕事の効率化やストレスの軽減にも効果があるとされています。「労働者が働きやすい環境をつくるため」という意義を明確にして、来たる年末、職場みんなで積極的に大掃除に取り組む機運を醸成しましょう。
事務所より一言
黒ラブ愛犬桃太郎を今年も山中湖のドッグプールワフに連れて行きました。毎年年中行事となっておりますので、ワフのフロントの手続きも待ちきれないように桃太郎はプールめがけてまっしぐらです。これまではライフジャケットなしで泳がせておりましたが、12歳の老犬ですので身体に無理をさせないよう初めて着衣させました。
◆誤配により知った奇妙な労災事故
毎朝寝起きに日経新聞に目を通しことが私の日常ですが、11月5日の一面トップに労災事故が出ておりました。「夫の過労死 労災認定へ妻苦悩」とありました。天下の日経がこれだけ取り上げるのだから一体どのような事件なのだろうと読み進みましたが、どうも書きぶりが違うのでよくよく見たら東京新聞が誤配されておりました。
しかし、この事件は社会保険労務士として参考になると共に、我が国で副業が推奨され始めている中での事業主様の関心事でもあるので、今月号で取り上げさせて頂きます。
◆前月の残業140時間 それでも労災でない?
急性心臓まひで死亡した労働者はトラックの配送と積み卸し業務担当でした。前月の残業は140時間と過労死ライン月100時間を優に超える過重労働実態でした。通常このような過重労働に対しては労災認定が出て然るべき所、大きな問題がありました。なんと、実態は一つの会社であるにもかかわらず、トラック運転中と積み卸し作業中を別会社勤務としていたのです。
死亡した労働者はフォークリフトで積み卸し中に亡くなりましたので積み卸し会社の労働時間だけの算定となり、過労死判定に影響を及ぼします。また、仮に過労死認定がされても労災支給基準となる平均賃金も大幅に下がることになります。どうして会社はこのようなことをしたのでしょうか。
◆別会社とする目的
記事によれば、このように別会社とした会社の主張は「業務の集約と効率化が目的」とのことですが、理由は別なところにあると思います。
まずは、別会社としたこの会社の目論見は社会保険料の軽減ではないかと思います。一つの会社で支払うべき賃金を二つに分けて、一社だけ社会保険に加入させれば標準報酬月額が下がります。どの事業主様も社会保険料負担に音を上げておりますがこのやり方によれば社会保険料が軽減できます。ただし、このやり方は従業員の不利益になり正当なことではありません。
もう一つの目的は、36協定の労働時間制限を逃れることにあると思います。36協定では例えば月間45時間、年間360時間以上は労働させられない縛りがありますが、あくまでもこれは1社毎のことであり、別な会社と通算することにはなっておりません。結果的に36協定制限時間が倍となるので、人手不足解消の便法となります。しかしながら、結果として今回のような過労死事故が起きています。この様な働かせ方は従業員の健康配慮義務を行っていないことであり、正当な企業が選択すべきやり方ではありません。
◆兼業・副業ある労働者の労災適用方法
一人でも労働者を雇用している会社は必ず労災保険に加入しなくてはなりません。また、労災保険は、正社員、契約社員、パートアルバイトの身分を問わず適用されます。それでは、一人の労働者がA社とB社の兼業または副業をおこなっている場合、労災はどのように適用されるのでしょうか。
労災事故では、事故発生の企業単体のみで判断し、別会社を通算しません。例えば労働者がA社(平均賃金月額50万円)とB社(平均賃金10万円)で兼業している場合、労災基準となる平均賃金は労災が発生した会社で決定します。つまりA社の労災事故補償はB社補償の5倍という計算になります。A社とB社が隣合っていて、労働者が真ん中で倒れたら、A社と判定されやすく家族がA社側へ少し動かすなどの与太話も聞こえてきそうです。
◆今回報道の事故は労災認定されました
上記の通り労災事故は事故発生企業毎に判断することになっております。すると今回の事故はフォークリフトで積み卸し中に亡くなりましたので積み卸し会社の労働時間と賃金だけで判断することになります。しかしながら、実際は一つの会社の指示命令で労働していることや積み卸し会社には実体がないこと等の証拠の積み重ねを行い、一つの会社としての労災認定がおりました。労災認定可否判断は通常6カ月程度ですが、特殊な事案のため、労災認定に10カ月を要したとのことです。
年末の風物詩「職場の大掃除」、実は法令義務だとご存じでしたか?
◆大掃除は会社の義務とされている
仕事納めの日には社内の大掃除をする、という会社は多いのではないでしょうか。忙しい部署からは、「ただでさえ年末はやることが多いのに、掃除に割く時間がもったいない」とか、「掃除は仕事じゃないのに……」などとボヤく声も聞こえてきそうです。
しかし、実は、会社の大掃除を行うことは、法律にも定められた義務であり、立派な仕事の1つなのです。
具体的には、労働安全衛生規則第619条に、「事業者は、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。」として、「日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に、統一的に行うこと」が定められています(第1項)。
◆職場の清潔保持は労働者の義務でもある
一方、労働者にも、「作業場の清潔に注意し、廃棄物を定められた場所以外の場所にすてないようにしなければならない」ことが義務付けられています(同規則第620条)。職場環境を清潔に保つことは、会社にとっても労働者にとっても、必要不可欠なこととされているのです。
◆義務付けのねらいを理解して積極的に大掃除に取り組もう
このような義務付けがなされているのは、労働者を守るためです。オフィス内が整理・整頓されていなければ事故も起こりやすくなりますし、不衛生な環境は病気の原因ともなります。安心して働くことのできる職場環境を維持するためにも、定期的に大掃除を行って職場の清潔を保持することが大切です。
また、職場環境をきれいに保つことは、仕事の効率化やストレスの軽減にも効果があるとされています。「労働者が働きやすい環境をつくるため」という意義を明確にして、来たる年末、職場みんなで積極的に大掃除に取り組む機運を醸成しましょう。
事務所より一言
黒ラブ愛犬桃太郎を今年も山中湖のドッグプールワフに連れて行きました。毎年年中行事となっておりますので、ワフのフロントの手続きも待ちきれないように桃太郎はプールめがけてまっしぐらです。これまではライフジャケットなしで泳がせておりましたが、12歳の老犬ですので身体に無理をさせないよう初めて着衣させました。