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社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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2021年3月号

いよいよ本番 同一労働同一賃金

◆4月から中小企業にも法律適用となります
大企業に対しては2020年4月に、いわゆる「働き方改革関連法」(パートタイム・有期雇用労働法、改正派遣法等)による「同一労働同一賃金」がすでに適用されております。中小企業への適用がいよいよ来月年4月1日に本番を迎えます。貴社でも既にご検討を重ねてこられたとは思いますが、新たな労使トラブルの要因ともなりかねませんのでくれぐれもご配慮が必要です。

この法令により、パートタイマーだから、或いは有期雇用契約者だから、給与や諸待遇が正社員より劣るのは当たり前という事業主の伝統的な主張は通らなくなります。また、これまで言われてきたような「正規と非正規では将来の役割期待が異なることから給与・諸待遇が違っても当然」という通説的な説明ではもはや対応できなくなります。また、なぜ給料等諸待遇に差があるのかパートタイマーや有期雇用社員から説明を求められた時に明確な説明責任も果たさなくてはならないと同法令で定められております。

◆同一労働同一賃金となる場合とは
 同一労働同一賃金とは頭では分かったような気がしますが、それでは何が同一のときには同一賃金を支払わなければならないのでしょうか。
法令には以下の通り記載されております。
1.労働者の業務の内容と責任の程度が同じ
2.労働者の職務の内容と配置が同じ
3.その他勘案すべき個別事情がない(例えば
  退職後の年金受給者である等)
  
(同一労働同一賃金に反する典型例)
正社員Aと有期雇用労働者Bが全く同じ仕事を、同じ責任を負って、人事異動も同じくある会社の場合を想定します。
正社員A:基本給30万円、通勤手当3万円、
皆勤手当2万円、住宅手当2万円
有期社員B:時給1,500円、通勤手当1万円、
      皆勤手当1万円、住宅手当なし

 正社員Aと有期社員Bは、社員としての職務、責任、人材活用方法が全く同じであり、違うのは入社の時の身分(正社員と有期社員)だけです。従来なら、この身分差があるので給与差は当然とされておりました。しかしながら、法令施行により正社員Aと有期社員Bを同一労働同一賃金にしなくてはならなくなります。具体的には有期社員Bの待遇を正社員Aと同等に引き上げるのか、或いは正社員Aの待遇を引き下げて有期社員Bと同等にするのか選択を迫られます。なお、正社員Aの待遇を引き下げる場合には就業規則の不利益変更の問題も発生します。

◆最高裁判決に見る賃金体系の整理
 同一労働同一賃金に係る最高裁判決がこれまでに7件重ねられてきました。それぞれの判決は個別の背景や事情があるにしても、最高裁判決により通底するものが一定見えてきましたので、ここで取りまとめてみたいと思います。
〇正社員と有期社員で同様支給すべきとされる手当や休暇

・皆勤手当 ・無事故手当 ・作業手当
・給食手当 ・通勤手当  ・年始祝日給
・年末年始勤務手当 ・夏季冬季休暇

(注)正社員だけに転勤がある事件では正社員だけへの住宅手当支給は合法とされました。

〇継続的な勤務が見込まれる有期社員に同様の支給をすべきとした手当や休暇

・扶養手当 ・病気休暇

この二件は継続勤務確保を目的とした給付であるとされました。継続勤務とは裁判毎の判断にはなりますが、5年が一応の目安となります。つまり正社員には付与しても5年を超えた有期社員に扶養手当や病気休暇がないことは不合理とされました。

〇正社員人材の確保・定着が目的であり有期社員への不支給も不合理でないとした賃金
 
・賞与 ・退職金

判決では賞与や退職金は会社の経営判断を重視せざるをえないとされております。

◆賃金名称等の検証が必要です
正社員を厚遇するために、これまで色々な名称の賃金を支給し、あるいは特別な休暇を付与してきましたが、この4月1日から同一労働同一賃金の厳格な法令遵守が求められます。

例えば正社員だけに皆勤手当と夏季冬季休暇を付与していれば法令違反と言われかねません。また、全く転勤のない企業で正社員だけに住宅手当を支給すれば、なぜ正社員だけなのかと問われます。今改めて、会社が支給している諸手当等の名称と実態が即しているのか検証が不可欠です。そして、正社員だけに支給する諸手当等があれば、法令上適法であるかの検証を行うことが必要であり、延いては今後の労使トラブル回避になります。

事務所より一言

私のお気に入りの散歩道は、谷保天満宮からJR国立駅までの大学通りといわれる一直線の素晴らしい散歩道です。車道と歩道がグリーンベルトで完全に隔絶されて、国立駅まで木立に囲まれた歩道が整備され、機会があれば一度皆様をご案内したい雰囲気があります。今は大学通りの桜も一面満開で譬え様もありません。

片道30分の大学通りには、国立高校(公立高校トップレベルで偏差値71)、桐朋学園(小学校から高校まで併設され、小学校入りたての生徒はランドセルの方が大きく感じられます)、一橋大学と名門校が並んで通りまさに学芸都市の趣があります。

安心して歩ける歩道環境のためか、国立高校のかなりの生徒は歩きながらテキストや参考書で勉強しております。携帯をいじっている生徒は誰一人おりません。自分も学生時代にこれ位勉強しておけばもう少しまともになっていたかもしれないと今になり反省させられます。

話は変わりますが、折角の春なのに、新型コロナウイルスのために今年もお花見は難しい状況が続きます。せめて写真で満開の桜をお楽しみ下さい。

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