パート労働者へ社会保険適用を
拡大へ
◆今なぜ適用拡大なのか
政府は、平成24年2月17日に社会保障・税一体改革大綱を閣議決定しましたが、同大綱の中で「短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大」を打ち出しております。
企業内におけるパート労働者の役割は年々重要度を増しており、正社員並みの中核業務を任せる企業も多くなっています。これら非正規労働者の年金権を確立するために、現行では社会保険の適用除外とされている週30時間未満勤務の労働者を一定範囲で拡大することとなりました。
◆渦巻いた外食産業等からの反対論
パート労働者を主力労働者とする産業界、とりわけ外食産業からは強い反対論が渦巻きました。仮に、現在のパート労働者に平均報酬月額10万円で社会保険(厚生年金・健康保険)加入を義務付けられた時には、事業主の負担は月約13,700円、年間約164,400円となり、平均営業利益率1%の業界が成り立たなくなるというものです。
◆とりあえずの線引き(2016年4月以降)
このような状況下において、国は、産業界の影響を勘案しながらも、社会保険適用者の拡大を図ることとして、以下の通りの拡大線引きを行うこととし、2016年4月から実施となりました(45万人が拡大対象となります)。さらに3年後には適用範囲の拡大が検討されており、パート労働者を多用する事業主は今後の動きから目が離せない状況にあります。
「社会保険の加入対象者」
*現在:週30時間以上の勤務者
*改定:2016年4月〜
@「週勤務時間20時間以上」
A「年収94万円(月収7万8,000円)以上」
B「勤務期間1年以上」で「従業員501人以上の企業で勤務」
◆改定による個人への影響(厚労省試算)
改定により新たに社会保険の加入者となった
場合、社会保険料の個人別増減は次の通りと
なります(年収120万円、46歳の女性で検証)。
@ 会社員の妻:保険料負担増16.2万円)
(年金9.7万円増、健保6.5万円増)
A 自営業者の妻:保険料負担減7.3万円
(年金8.4万円減、健保1.1万円増)
B 単身者:9.2万円減
(年金8.4万円減、健保0.8万円減)
会社員の妻は、従来夫でカバーされていた保険(年金は3号被保険者、健保は被扶養者)を改定後自分で支払うために影響が大きくなります。
一方厚生年金加入1年により、全員の老後の年額が約6千円増加します(10年間年金に加入の時、年額6万円増加。生涯加算されます。)
◆負担軽減措置も検討
今回の適用拡大をめぐり、厚生労働省では、高齢者医療費の拠出金などについて負担を軽減する特例措置の導入を検討しています。
パート労働者が多い業界(外食、流通業など)を対象に、負担増の部分について健保組合の加入者が肩代わりするというものですが、健保組合の悲鳴が聞こえてきそうです。
「有期労働契約」の変更方向
(労働契約法改正が閣議決定)
◆改正案が閣議決定
先日、「労働契約法改正案」が閣議決定されました。国会の状況により流動的ではありますが、厚生労働省は来春施行を目指すとしており、成立した場合は企業への影響も大きいと思われますのでお知らせいたします。
◆改正案のポイント
この改正案のポイントは、次の通りです。
(1)5年を超えて反復更新された有期労働契約について、労働者からの申込みがあれば期間の定めのない労働契約へ転換させる仕組みの導入(5年のカウント開始は法施行以降)
(2)「雇止め法理」の法制化
(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
◆具体的な内容
まず(1)については、反復更新により有機の労働契約が5年を超える場合が対象です。事業主は雇用期間の管理が重要となります。ただし、原則6カ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間と通算されないため、該当しないこととなります。
次に(2)の「雇止め法理」は、有期労働契約を繰り返し更新することにより期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている(あるいは有期労働契約の期間満了後にも雇用が継続されている)等により、有期雇用労働者の雇用関係継続への合理的な期待が認められるときに、雇止めを行う際には合理的な理由が必要であることを法制化するものです。なお、雇止めが無効と判断された場合には、従前の労働契約が更新されたものとみなされることになります。
また、(3)は、期間の定めがあることによって、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違する場合に、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲を考慮し、不合理と認められるものであってはならないというものです。
所長よりひと言
私は、職業柄、厚生労働省の最新情報配信サービスを毎日ウオッチしておりますが、4月20日の情報で医師の国家試験問題と解答が偶々目に入りました。医師の国家試験といえば日本でも最難関の試験です。一体どの様な問題がだされているのか興味半分でクリックしましたが、出てきた問題が面白く、医師の国家試験に親しみを感じました。そして、なんと正解は唯一つであることが私にも歴然としておりました。皆様も解いてみてはいかがでしょうか。なお、正解は言うまでもないことなのでお示ししませんが、これまで色々な医師に様々な言い方を実際にされ、正解が分からなくなっておられる方は当事務所までメールを頂ければご回答いたします。
『問題』
52歳の男性。糖尿病の治療目的で外来通院中である。体重を減量する必要性を本人も理解しているが、これまで5回の受診で体重が漸増している。身長165cm、体重82kg, HbA1c7.6%(標準4.3〜5.8) 医師の発言として適切なのはどれか。
『選択肢』
a.「何度説明しても無駄ですね」
b.「減量では何がつらいですか」
c.「体重が増えて透析になっても知りませんよ」
d.「次回までに体重が減らないと私は責任がもてません」
e.「今回できなかった分も加えて次回までに減量しましょう」 正解は・・・・
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◆今なぜ適用拡大なのか
政府は、平成24年2月17日に社会保障・税一体改革大綱を閣議決定しましたが、同大綱の中で「短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大」を打ち出しております。
企業内におけるパート労働者の役割は年々重要度を増しており、正社員並みの中核業務を任せる企業も多くなっています。これら非正規労働者の年金権を確立するために、現行では社会保険の適用除外とされている週30時間未満勤務の労働者を一定範囲で拡大することとなりました。
◆渦巻いた外食産業等からの反対論
パート労働者を主力労働者とする産業界、とりわけ外食産業からは強い反対論が渦巻きました。仮に、現在のパート労働者に平均報酬月額10万円で社会保険(厚生年金・健康保険)加入を義務付けられた時には、事業主の負担は月約13,700円、年間約164,400円となり、平均営業利益率1%の業界が成り立たなくなるというものです。
◆とりあえずの線引き(2016年4月以降)
このような状況下において、国は、産業界の影響を勘案しながらも、社会保険適用者の拡大を図ることとして、以下の通りの拡大線引きを行うこととし、2016年4月から実施となりました(45万人が拡大対象となります)。さらに3年後には適用範囲の拡大が検討されており、パート労働者を多用する事業主は今後の動きから目が離せない状況にあります。
「社会保険の加入対象者」
*現在:週30時間以上の勤務者
*改定:2016年4月〜
@「週勤務時間20時間以上」
A「年収94万円(月収7万8,000円)以上」
B「勤務期間1年以上」で「従業員501人以上の企業で勤務」
◆改定による個人への影響(厚労省試算)
改定により新たに社会保険の加入者となった
場合、社会保険料の個人別増減は次の通りと
なります(年収120万円、46歳の女性で検証)。
@ 会社員の妻:保険料負担増16.2万円)
(年金9.7万円増、健保6.5万円増)
A 自営業者の妻:保険料負担減7.3万円
(年金8.4万円減、健保1.1万円増)
B 単身者:9.2万円減
(年金8.4万円減、健保0.8万円減)
会社員の妻は、従来夫でカバーされていた保険(年金は3号被保険者、健保は被扶養者)を改定後自分で支払うために影響が大きくなります。
一方厚生年金加入1年により、全員の老後の年額が約6千円増加します(10年間年金に加入の時、年額6万円増加。生涯加算されます。)
◆負担軽減措置も検討
今回の適用拡大をめぐり、厚生労働省では、高齢者医療費の拠出金などについて負担を軽減する特例措置の導入を検討しています。
パート労働者が多い業界(外食、流通業など)を対象に、負担増の部分について健保組合の加入者が肩代わりするというものですが、健保組合の悲鳴が聞こえてきそうです。
「有期労働契約」の変更方向
(労働契約法改正が閣議決定)
◆改正案が閣議決定
先日、「労働契約法改正案」が閣議決定されました。国会の状況により流動的ではありますが、厚生労働省は来春施行を目指すとしており、成立した場合は企業への影響も大きいと思われますのでお知らせいたします。
◆改正案のポイント
この改正案のポイントは、次の通りです。
(1)5年を超えて反復更新された有期労働契約について、労働者からの申込みがあれば期間の定めのない労働契約へ転換させる仕組みの導入(5年のカウント開始は法施行以降)
(2)「雇止め法理」の法制化
(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
◆具体的な内容
まず(1)については、反復更新により有機の労働契約が5年を超える場合が対象です。事業主は雇用期間の管理が重要となります。ただし、原則6カ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間と通算されないため、該当しないこととなります。
次に(2)の「雇止め法理」は、有期労働契約を繰り返し更新することにより期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている(あるいは有期労働契約の期間満了後にも雇用が継続されている)等により、有期雇用労働者の雇用関係継続への合理的な期待が認められるときに、雇止めを行う際には合理的な理由が必要であることを法制化するものです。なお、雇止めが無効と判断された場合には、従前の労働契約が更新されたものとみなされることになります。
また、(3)は、期間の定めがあることによって、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違する場合に、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲を考慮し、不合理と認められるものであってはならないというものです。
所長よりひと言
私は、職業柄、厚生労働省の最新情報配信サービスを毎日ウオッチしておりますが、4月20日の情報で医師の国家試験問題と解答が偶々目に入りました。医師の国家試験といえば日本でも最難関の試験です。一体どの様な問題がだされているのか興味半分でクリックしましたが、出てきた問題が面白く、医師の国家試験に親しみを感じました。そして、なんと正解は唯一つであることが私にも歴然としておりました。皆様も解いてみてはいかがでしょうか。なお、正解は言うまでもないことなのでお示ししませんが、これまで色々な医師に様々な言い方を実際にされ、正解が分からなくなっておられる方は当事務所までメールを頂ければご回答いたします。
『問題』
52歳の男性。糖尿病の治療目的で外来通院中である。体重を減量する必要性を本人も理解しているが、これまで5回の受診で体重が漸増している。身長165cm、体重82kg, HbA1c7.6%(標準4.3〜5.8) 医師の発言として適切なのはどれか。
『選択肢』
a.「何度説明しても無駄ですね」
b.「減量では何がつらいですか」
c.「体重が増えて透析になっても知りませんよ」
d.「次回までに体重が減らないと私は責任がもてません」
e.「今回できなかった分も加えて次回までに減量しましょう」 正解は・・・・