飲酒運転禁止のだめ押し時期です
◆忘年会・新年会の時期になりました
はや12月になり、貴社従業員の方もこれから忘年会・新年会にお出かけになることが多いと思います。宴席には見るからに美味しそうな生きの良い刺身、だし汁が香る熱々のお鍋、程良くカラッと揚げられた唐揚げ等々、これをビールや熱燗(人によってはワインとか焼酎もあるでしょう)なしで食することが出来ましょうか。左党の当職はキリリと冷えた冷酒があれば更に幸せになります。
一同親交が進みおなかが満腹になり、さてお開きとなった後で、車のキーをもったら、その方の身の破滅となります。飲酒運転はダメであることは言うまでも無く、誰もが百万遍も聞かされていても、人間は弱いものであり、見つからなければ上手くやったとなってしまいます。絶対飲酒運転はあり得ないというモラルの極めて高い会社は別として、宴席が多くなる12月はやはり飲酒運転は絶対ダメであることを会社はだめ押しを行う時期と思われます。
以前の事務所便りで、京都市の中学校の元教頭(52歳)が2010年4月に飲酒運転し自家用車で物損事故(車に追突)を起こし、懲戒免職と退職金不支給の制裁を受けた事件をご案内いたしました。この元教頭はせめて退職金だけは勘弁して貰いたいと裁判を起こしましたが、控訴審判決で、大阪高裁は、原告側勝訴となった上記の一審判決を取り消し、元教頭の請求を棄却しました(平成24年8月24日判決)。
即ち、勤め先を失い、老後の糧となるはずであった退職金を失い、そして教職者としての名誉も失いました。飲酒運転では良いことは何もないことを肝に銘じる事件といって良いと思います。
更には、事故を起こした相手への損害賠償義務も生じます。人身事故であれば、その賠償金額は膨大なものとなります。一回の飲酒運転の過ちが人生を破滅させることを会社全体に周知徹底させる良い機会と思います(ただし、幸か不幸か、自動車保険に加入しておれば、飲酒運転に対しても被害者保護の観点から保険金は支払われます)。
◆飲酒運転事故率に地域差があります
日本損害保険協会の昨年の事故統計に拠りますと、ワーストとベストは次の通りとなっております。
ワースト順 沖縄→茨城→栃木
ベスト順 福岡→東京、愛知(同順位)
この順位の理由を推測すると、ワーストの地域は交通手段が少なく、自動車に頼らざるを得ない状況でありながら、それでもやっぱりお酒を飲みに出かけるというものと思われます(沖縄はゆいレールという短距離モノレール以外の鉄道はありません)。その一方で福岡・東京・愛知は多彩な交通手段が深夜まで利用出来ることや、特に福岡では平成18年の福岡市職員による飲酒追突事故で、子供3人が博多湾に投げ出され、投げ出された子供を助けるために母親が何度も水中に潜り探そうとしたという痛ましい事件が地域の教訓となり、また飲酒運転の厳罰処分を是とする風土が出来たためと思われます。
◆飲酒運転に対する懲戒処分の周知
飲酒運転はダメと言っても、従業員からは当たり前の事と聞き逃されてしまうこともありますので、飲酒運転には懲戒処分があることを周知させることも有用です。
私行上の行動は本来会社制約から自由となりますが、飲酒運転や犯罪行為等社会秩序を乱す行為を従業員が行った場合には、たとえ私行上とはいえ会社は従業員に対し懲戒を行うことが出来るとされております。まして、事故の内容や企業知名度によっては会社名まで報道され、飲酒運転を行った本人だけでなく、会社も社会的名誉が失墜することがあり懲戒処分は必要となります。ただし、具体的な飲酒運転に対する懲戒規程が就業規則になければ懲戒処分ができませんので、この際に就業規則を点検されることをお勧めします。
最も厳しい懲戒処分である懲戒解雇が可能か否かについては、画一的なスケールはありませんが、最高裁判所の判断は「犯罪行為の性質、態様、情状、会社の業種、規模、労働者の会社における職種、地位などを総合勘案する」とされております。つまり、飲酒運転で言えば、飲酒運転の度合い(酒酔い運転・酒気帯び運転の程度)、会社業種(公務員か民間会社か、また、民間会社であれば業種とその規模)、事故の程度(人身事故、物損事故)、地位(管理職、無役職者)により判断されることとなります。例えはとても悪いですが、本来従業員の指導を行うべき著名企業の役職者が、泥酔の上、歩道に乗り上げて歩いていた歩行者を撥ねて負傷、最悪死亡させマスコミ報道された場合には言い逃れの余地がなく、懲戒解雇処分が相当とされることがあります(勿論、就業規則に飲酒運転に対して懲戒解雇処分があることが前提です)。
◆マイカー通勤には自動車保険チェックが必要
会社によっては従業員にマイカー通勤を認めているところもあると思います。マイカーを利用した出退勤や会社業務にマイカーを使用している場合には使用者責任(民法715条)が追求されることがあります。出退勤途上で従業員が飲酒運転を行ったときに従業員に損害賠償資力がなければ矛先は会社に向けられることとなります。特に人身事故の場合は多額な損害賠償金となる可能性があり、会社にとっては経営を揺るがせかねない事態となります。
マイカー通勤を認めている会社では、自動車保険加入(特に対人無制限)と、自動車保険証の提示を就業規則に設けることで、不測の賠償責任から免れることとなります。また、前記の通り、仮に飲酒運転の場合でも他の免責事項に該当しなければ被害者保護のため対人・対物の保険金を受けることは可能であり飲酒運転にかかる企業リスクを回避できます。この点に関しても貴社の就業規則のご点検をお勧めします。
所長より一言
私の前職(損害保険会社)の話で恐縮ですが、自動車保険販売事業ということもあり、飲酒運転罰則の厳格化を行い、飲酒運転を行えば懲戒解雇となる就業規則を私自身が作成いたしました。願わくは自分の手がけた就業規則で解雇者を出したくないと思いましたが(特にゴルフプレー終了後の飲酒を懸念しました)、結果として幸い杞憂に終わりました。しかしながら、世の中にはお酒の誘惑に勝てず、ついつい飲酒運転をしてしまうことがあります。美酒を好む一人として自ら自戒しております。本当に月並みですが「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」が最も大切な事と痛感します。
◆忘年会・新年会の時期になりました
はや12月になり、貴社従業員の方もこれから忘年会・新年会にお出かけになることが多いと思います。宴席には見るからに美味しそうな生きの良い刺身、だし汁が香る熱々のお鍋、程良くカラッと揚げられた唐揚げ等々、これをビールや熱燗(人によってはワインとか焼酎もあるでしょう)なしで食することが出来ましょうか。左党の当職はキリリと冷えた冷酒があれば更に幸せになります。
一同親交が進みおなかが満腹になり、さてお開きとなった後で、車のキーをもったら、その方の身の破滅となります。飲酒運転はダメであることは言うまでも無く、誰もが百万遍も聞かされていても、人間は弱いものであり、見つからなければ上手くやったとなってしまいます。絶対飲酒運転はあり得ないというモラルの極めて高い会社は別として、宴席が多くなる12月はやはり飲酒運転は絶対ダメであることを会社はだめ押しを行う時期と思われます。
以前の事務所便りで、京都市の中学校の元教頭(52歳)が2010年4月に飲酒運転し自家用車で物損事故(車に追突)を起こし、懲戒免職と退職金不支給の制裁を受けた事件をご案内いたしました。この元教頭はせめて退職金だけは勘弁して貰いたいと裁判を起こしましたが、控訴審判決で、大阪高裁は、原告側勝訴となった上記の一審判決を取り消し、元教頭の請求を棄却しました(平成24年8月24日判決)。
即ち、勤め先を失い、老後の糧となるはずであった退職金を失い、そして教職者としての名誉も失いました。飲酒運転では良いことは何もないことを肝に銘じる事件といって良いと思います。
更には、事故を起こした相手への損害賠償義務も生じます。人身事故であれば、その賠償金額は膨大なものとなります。一回の飲酒運転の過ちが人生を破滅させることを会社全体に周知徹底させる良い機会と思います(ただし、幸か不幸か、自動車保険に加入しておれば、飲酒運転に対しても被害者保護の観点から保険金は支払われます)。
◆飲酒運転事故率に地域差があります
日本損害保険協会の昨年の事故統計に拠りますと、ワーストとベストは次の通りとなっております。
ワースト順 沖縄→茨城→栃木
ベスト順 福岡→東京、愛知(同順位)
この順位の理由を推測すると、ワーストの地域は交通手段が少なく、自動車に頼らざるを得ない状況でありながら、それでもやっぱりお酒を飲みに出かけるというものと思われます(沖縄はゆいレールという短距離モノレール以外の鉄道はありません)。その一方で福岡・東京・愛知は多彩な交通手段が深夜まで利用出来ることや、特に福岡では平成18年の福岡市職員による飲酒追突事故で、子供3人が博多湾に投げ出され、投げ出された子供を助けるために母親が何度も水中に潜り探そうとしたという痛ましい事件が地域の教訓となり、また飲酒運転の厳罰処分を是とする風土が出来たためと思われます。
◆飲酒運転に対する懲戒処分の周知
飲酒運転はダメと言っても、従業員からは当たり前の事と聞き逃されてしまうこともありますので、飲酒運転には懲戒処分があることを周知させることも有用です。
私行上の行動は本来会社制約から自由となりますが、飲酒運転や犯罪行為等社会秩序を乱す行為を従業員が行った場合には、たとえ私行上とはいえ会社は従業員に対し懲戒を行うことが出来るとされております。まして、事故の内容や企業知名度によっては会社名まで報道され、飲酒運転を行った本人だけでなく、会社も社会的名誉が失墜することがあり懲戒処分は必要となります。ただし、具体的な飲酒運転に対する懲戒規程が就業規則になければ懲戒処分ができませんので、この際に就業規則を点検されることをお勧めします。
最も厳しい懲戒処分である懲戒解雇が可能か否かについては、画一的なスケールはありませんが、最高裁判所の判断は「犯罪行為の性質、態様、情状、会社の業種、規模、労働者の会社における職種、地位などを総合勘案する」とされております。つまり、飲酒運転で言えば、飲酒運転の度合い(酒酔い運転・酒気帯び運転の程度)、会社業種(公務員か民間会社か、また、民間会社であれば業種とその規模)、事故の程度(人身事故、物損事故)、地位(管理職、無役職者)により判断されることとなります。例えはとても悪いですが、本来従業員の指導を行うべき著名企業の役職者が、泥酔の上、歩道に乗り上げて歩いていた歩行者を撥ねて負傷、最悪死亡させマスコミ報道された場合には言い逃れの余地がなく、懲戒解雇処分が相当とされることがあります(勿論、就業規則に飲酒運転に対して懲戒解雇処分があることが前提です)。
◆マイカー通勤には自動車保険チェックが必要
会社によっては従業員にマイカー通勤を認めているところもあると思います。マイカーを利用した出退勤や会社業務にマイカーを使用している場合には使用者責任(民法715条)が追求されることがあります。出退勤途上で従業員が飲酒運転を行ったときに従業員に損害賠償資力がなければ矛先は会社に向けられることとなります。特に人身事故の場合は多額な損害賠償金となる可能性があり、会社にとっては経営を揺るがせかねない事態となります。
マイカー通勤を認めている会社では、自動車保険加入(特に対人無制限)と、自動車保険証の提示を就業規則に設けることで、不測の賠償責任から免れることとなります。また、前記の通り、仮に飲酒運転の場合でも他の免責事項に該当しなければ被害者保護のため対人・対物の保険金を受けることは可能であり飲酒運転にかかる企業リスクを回避できます。この点に関しても貴社の就業規則のご点検をお勧めします。
所長より一言
私の前職(損害保険会社)の話で恐縮ですが、自動車保険販売事業ということもあり、飲酒運転罰則の厳格化を行い、飲酒運転を行えば懲戒解雇となる就業規則を私自身が作成いたしました。願わくは自分の手がけた就業規則で解雇者を出したくないと思いましたが(特にゴルフプレー終了後の飲酒を懸念しました)、結果として幸い杞憂に終わりました。しかしながら、世の中にはお酒の誘惑に勝てず、ついつい飲酒運転をしてしまうことがあります。美酒を好む一人として自ら自戒しております。本当に月並みですが「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」が最も大切な事と痛感します。