人手不足産業のリクルート状況と対策
本事務所便り5月号で「今日本では人手不足です」のテーマで色々なことを取り上げました。例えば、人手不足ではブラック企業が成り立たなくなること、アルバイトの時給が上昇していること、人手不足倒産のことなどです。
直近6月27日厚労省の雇用統計でも、有効求人倍率は1.09倍、つまり職を求める人が100人いれば、求人している企業が109社いる状況までになってきました。この数字は1992年6月以来の22年ぶりの高い水準です。このような中で特に人手不足となっている業界が、医療・福祉、建設業です。今月号ではこれら人手不足産業の新卒高卒者リクルート状況と雇用対策について取り上げました。
◆医療・福祉、建設業における人手不足が深刻
厚労省データでは、平成25年度の高卒者向け求人は各産業から多く出ておりますが、充足率の低さでみれば、医療・福祉で31.3%、建設業で34.2%と他産業と比較して著しく低調であり、人手不足の解消と充足率の向上が課題となっています。
◆採用できた事業所・できなかった事業所の差は?
医療・福祉での高卒向け採用成否をみると、早期(平成25年7月末まで)に求人を出した事業所の方が、遅れて求人を出した事業所よりも明らかに優位差が見られました。建設業も同じ傾向にあります。このことから「早期の求人票提出」が充足率を上げるポイントとなります。
また、求人票の「採用・離職状況」欄の記載があった事業所の方が、多く新人を採用できています。就職する側も真剣です。「採用・離職状況」欄で定着率が悪いと思われる会社には求職者も出向こうとはしません。また、同欄が無記載であれば、都合が悪い状況だから書けないと判断されてしまいます。やはり自社の積極的な情報開示を行うことがリクルートでは有用となります。
また、当事務所では求人を行う事業主様に対し、魅力的な求人票を作成するよう平素よりアドバイスしております。魅力的な求人票とは、なにも虚偽の労働条件を記載することではなく、自社が誇れる会社の文化、風土、他社にない素晴らしい強み等の情報を発信することです。会社に魅力を感じれば求職者の志望動機も大きくなります。求人票は求職者が初めて接する会社の顔であるという位置づけから心を込めた求人票作りが新戦力の獲得に有用となります。
◆なぜ人が集まらないのか?
高校の進路指導担当教諭に対して、充足率の向上が課題となっている医療・福祉や建設業に生徒が応募しない理由を聞いたところ、「仕事がきつそう・面白くなさそう等、仕事内容(職種)の問題」という回答割合が高かったようです。やはり若い求職者はドライな発想でイメージ先行となっております。業界自体のイメージ変革が人材募集のポイントとなります。
◆充足率向上のために必要な改善点
充足率向上のため必要な改善点について、同じく高校の進路指導担当教諭からの意見をまとめると次の通りでした。
「医療・福祉」では、給与・休日・労働時間等労働条件を改善し、社会的評価・イメージを向上させる取組み、日勤・夜勤といった就業規則が不規則でも生活のリズムが崩れない配慮、OJTの充実と資格取得までの制度や支援の充実などが挙げられました。
「建設業」では、将来性やスキルアップのビジョンを示すことや、3Kのイメージを払拭する取組み、労働条件の改善が挙げられました。
これらに掲げられた改善点は業界としての特性を反映した悩みの部分であり、簡単に解消できるものではありませんが、少しずつでも改善をすすめ業界全体の魅力を高めることは人材募集力増強の観点からも重要なことと思います。
◆人材育成の重要性と助成金の利用
企業の経営資源は、人・物・金・情報で構成されますが、なんと言っても人があっての企業となります。その意味では医療・福祉や建設業界でも人材の育成は重要な課題となります。前出の要改善点でも、OJTの充実・資格取得・スキルアップ等が求められております。このような時に役立つ助成金がありますのでご案内いたします。詳細については当事務所にご照会ください。
1.介護事業者向け助成金
「中小企業労働環境向上助成金」・・・評価処遇制度・研修体系制度・健康づくり制度の導入で合計100万円の助成が受けられます。
2.建設事業者向け助成金
「建設労働者確保育成助成金」・・・評価処遇制度・研修体系制度・健康づくり制度の導入で合計100万円の助成が受けられます。
3.全ての中小企業が利用出来る主な助成金
(1)「キャリアアップ助成金」・・・有期労働者のための助成金で、正社員転換(50万円)、健康管理制度(40万円)、人材育成(OJT,OffJT時間の賃金と受講料の補助)等があります。
(2)「キャリア形成促進助成金」・・・正社員のための助成金で、人材育成(OJT,OffJT時間の賃金と受講料の補助)等があります。
事務所より一言
先日駆け足で島根県の津和野と山口県の萩を巡ってまいりました。学生時代どっぷりと森鴎外に浸かっていた私が生地である津和野に一度も訪れたことがないことが心の引け目となっておりましたが、今回ようやく念願が叶いました。森鴎外が10歳まで勉学に勤しんだ部屋の前に佇み胸が熱くなりました。鴎外への傾倒が勢い余り、次男には鴎外の随筆「羽鳥千尋」に因み「千尋」と名付けました。あの鴎外先生をして賞賛せしめた素晴らしい青年羽鳥千尋のようになって欲しいという親心から付けましたが、大迷惑だったのは千尋の方だったようです。これまで名前から女性と間違われたこと数知れずあったそうです。本人に言わせればもう慣れっこになったとのことですが、男性著名人で千尋の名前の方々がもっと出れば男性名としての認知度も高まるのではないかと期待しております。
次に訪れた萩では吉田松陰を祭った松陰神社を訪れました。来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は吉田松陰の妹である文の生涯を取り上げるそうであり、来年の松陰神社周辺は大賑わいになると思います。吉田松陰については級友との忘れられないやりとりがあります。私が通っていた高校はいわゆる進学校でしたが、クラスでただ一人家業を継ぐからと大学に進学しない男子生徒がおりました。その名も吉田君でした。吉田君は大学進学しないにも拘わらず、受験生以上に熱心に勉強するのです。私は吉田君に何気なく「大学に進まないのに何故そんなに勉強するの?」と、今思うと大変馬鹿な質問をしてしまいました。すると吉田君は、いつもは柔和な顔を厳しくさせて、「君は安政の大獄で吉田松陰が打ち首になる直前まで勉学に勤めていたことを知らないの?勉強は大学に行くためのものではないよ」と返されてしまい恥じ入りました。半世紀近く前の胸にぐさりと来た言葉が松陰神社で思わず浮かんできました。
本事務所便り5月号で「今日本では人手不足です」のテーマで色々なことを取り上げました。例えば、人手不足ではブラック企業が成り立たなくなること、アルバイトの時給が上昇していること、人手不足倒産のことなどです。
直近6月27日厚労省の雇用統計でも、有効求人倍率は1.09倍、つまり職を求める人が100人いれば、求人している企業が109社いる状況までになってきました。この数字は1992年6月以来の22年ぶりの高い水準です。このような中で特に人手不足となっている業界が、医療・福祉、建設業です。今月号ではこれら人手不足産業の新卒高卒者リクルート状況と雇用対策について取り上げました。
◆医療・福祉、建設業における人手不足が深刻
厚労省データでは、平成25年度の高卒者向け求人は各産業から多く出ておりますが、充足率の低さでみれば、医療・福祉で31.3%、建設業で34.2%と他産業と比較して著しく低調であり、人手不足の解消と充足率の向上が課題となっています。
◆採用できた事業所・できなかった事業所の差は?
医療・福祉での高卒向け採用成否をみると、早期(平成25年7月末まで)に求人を出した事業所の方が、遅れて求人を出した事業所よりも明らかに優位差が見られました。建設業も同じ傾向にあります。このことから「早期の求人票提出」が充足率を上げるポイントとなります。
また、求人票の「採用・離職状況」欄の記載があった事業所の方が、多く新人を採用できています。就職する側も真剣です。「採用・離職状況」欄で定着率が悪いと思われる会社には求職者も出向こうとはしません。また、同欄が無記載であれば、都合が悪い状況だから書けないと判断されてしまいます。やはり自社の積極的な情報開示を行うことがリクルートでは有用となります。
また、当事務所では求人を行う事業主様に対し、魅力的な求人票を作成するよう平素よりアドバイスしております。魅力的な求人票とは、なにも虚偽の労働条件を記載することではなく、自社が誇れる会社の文化、風土、他社にない素晴らしい強み等の情報を発信することです。会社に魅力を感じれば求職者の志望動機も大きくなります。求人票は求職者が初めて接する会社の顔であるという位置づけから心を込めた求人票作りが新戦力の獲得に有用となります。
◆なぜ人が集まらないのか?
高校の進路指導担当教諭に対して、充足率の向上が課題となっている医療・福祉や建設業に生徒が応募しない理由を聞いたところ、「仕事がきつそう・面白くなさそう等、仕事内容(職種)の問題」という回答割合が高かったようです。やはり若い求職者はドライな発想でイメージ先行となっております。業界自体のイメージ変革が人材募集のポイントとなります。
◆充足率向上のために必要な改善点
充足率向上のため必要な改善点について、同じく高校の進路指導担当教諭からの意見をまとめると次の通りでした。
「医療・福祉」では、給与・休日・労働時間等労働条件を改善し、社会的評価・イメージを向上させる取組み、日勤・夜勤といった就業規則が不規則でも生活のリズムが崩れない配慮、OJTの充実と資格取得までの制度や支援の充実などが挙げられました。
「建設業」では、将来性やスキルアップのビジョンを示すことや、3Kのイメージを払拭する取組み、労働条件の改善が挙げられました。
これらに掲げられた改善点は業界としての特性を反映した悩みの部分であり、簡単に解消できるものではありませんが、少しずつでも改善をすすめ業界全体の魅力を高めることは人材募集力増強の観点からも重要なことと思います。
◆人材育成の重要性と助成金の利用
企業の経営資源は、人・物・金・情報で構成されますが、なんと言っても人があっての企業となります。その意味では医療・福祉や建設業界でも人材の育成は重要な課題となります。前出の要改善点でも、OJTの充実・資格取得・スキルアップ等が求められております。このような時に役立つ助成金がありますのでご案内いたします。詳細については当事務所にご照会ください。
1.介護事業者向け助成金
「中小企業労働環境向上助成金」・・・評価処遇制度・研修体系制度・健康づくり制度の導入で合計100万円の助成が受けられます。
2.建設事業者向け助成金
「建設労働者確保育成助成金」・・・評価処遇制度・研修体系制度・健康づくり制度の導入で合計100万円の助成が受けられます。
3.全ての中小企業が利用出来る主な助成金
(1)「キャリアアップ助成金」・・・有期労働者のための助成金で、正社員転換(50万円)、健康管理制度(40万円)、人材育成(OJT,OffJT時間の賃金と受講料の補助)等があります。
(2)「キャリア形成促進助成金」・・・正社員のための助成金で、人材育成(OJT,OffJT時間の賃金と受講料の補助)等があります。
事務所より一言
先日駆け足で島根県の津和野と山口県の萩を巡ってまいりました。学生時代どっぷりと森鴎外に浸かっていた私が生地である津和野に一度も訪れたことがないことが心の引け目となっておりましたが、今回ようやく念願が叶いました。森鴎外が10歳まで勉学に勤しんだ部屋の前に佇み胸が熱くなりました。鴎外への傾倒が勢い余り、次男には鴎外の随筆「羽鳥千尋」に因み「千尋」と名付けました。あの鴎外先生をして賞賛せしめた素晴らしい青年羽鳥千尋のようになって欲しいという親心から付けましたが、大迷惑だったのは千尋の方だったようです。これまで名前から女性と間違われたこと数知れずあったそうです。本人に言わせればもう慣れっこになったとのことですが、男性著名人で千尋の名前の方々がもっと出れば男性名としての認知度も高まるのではないかと期待しております。
次に訪れた萩では吉田松陰を祭った松陰神社を訪れました。来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は吉田松陰の妹である文の生涯を取り上げるそうであり、来年の松陰神社周辺は大賑わいになると思います。吉田松陰については級友との忘れられないやりとりがあります。私が通っていた高校はいわゆる進学校でしたが、クラスでただ一人家業を継ぐからと大学に進学しない男子生徒がおりました。その名も吉田君でした。吉田君は大学進学しないにも拘わらず、受験生以上に熱心に勉強するのです。私は吉田君に何気なく「大学に進まないのに何故そんなに勉強するの?」と、今思うと大変馬鹿な質問をしてしまいました。すると吉田君は、いつもは柔和な顔を厳しくさせて、「君は安政の大獄で吉田松陰が打ち首になる直前まで勉学に勤めていたことを知らないの?勉強は大学に行くためのものではないよ」と返されてしまい恥じ入りました。半世紀近く前の胸にぐさりと来た言葉が松陰神社で思わず浮かんできました。