ノーベル物理学賞で関心増!
「職務発明」権利の帰属
◆職務発明の対価に改めてスポットが
本年のノーベル物理学賞に3人の日本人が受賞いたしました。日本人からノーベル賞受賞者がでると我が事のように嬉しくなるので不思議です。
この話題に関連して、マスコミ報道等では、受賞者の1人である中村修二博士の「青色発光ダイオード事件」を引き合いに、「職務発明」と「その対価(職務発明を行った従業員等に支払われるべき報酬)」に改めてスポットが当てられています。
当職は中村修二博士のお名前は以前から存じ上げておりました。2004年1月東京地裁判決において、この発明の対価として200億円という巨額な支払い命令をかつての勤務先である日亜化学工業から勝ち取ったことは当時大変なニュースとなりました(その後東京高裁で8億4千万円の和解となりましたが、その時中村博士は記者会見で「日本の司法は腐っている」と述べております)。
ノーベル賞受賞者は、宝塚歌劇団ではありませんが、「清く正しく美しく」なければならず、訴訟行為を行う者などはその対極点にあると思っておりましたので、今回の中村博士の受賞は意外でした。逆にみれば、ノーベル財団は中村博士の訴訟行為に対して、研究者として正当な主張であると肯定的な見方をしていると判断しても良さそうです。
◆「職務発明」と「その対価」とは?
職務発明とは、会社の従業員等が職務上行った発明のことであり、現行法令上発明は従業員等に帰属します。
ただし、会社は、職務発明を発明者である従業員等から承継することをあらかじめ社内規程等で定めておき、発明の価値に見合った「相当の対価」を支払うことにより、特許を取得する権利を承継することができます。この意味で就業規則等による定めは重要です。
この「相当の対価」をめぐっては、現在、社内規程が不合理と認められる場合にのみ、裁判所が対価を算出することとされています。会社にとっては、相当と思われる対価を支払っていても従業員等から訴訟を提起されるリスクがあるということです。
このようなリスクを減らすために、特許庁では、特許の権利を会社帰属とする改正法案を来年の通常国会に提出する方針を固めました。なお、その代わりに、適正な報酬の支払いが義務付けられることとなる見込みです。
特許庁のこの報道は中村博士のノーベル賞受賞直後に行われており、中村博士の受賞が新聞発表のインパクトになったのではないかと思われます。
◆中小企業こそ他人事ではない
特許・発明というと、大企業の話…と受け止める向きもありますが、特許出願は中小企業こそ、時として生命線となることもあり得るものです。
同じ業界の大手企業とまともに勝負をしては太刀打ちできなくても、ニッチな部分で多数の特許を取得しており、互角に戦える力を持っている中小企業はたくさんあります。
特許庁ホームページでは、「知的財産権活用企業事例集2014〜知恵と知財でがんばる中小企業〜」が掲載されており、中小企業139社の成功事例が業種別に掲載されておりご参考になると思われます。この事例の中で、例えば、北海道の製菓会社が「カリカリ」というスナック菓子を売り出そうとしている時に、社長夫人が食べたくなり、「カリカリまだある?」と聞いたことをそそまま商品名にして大ヒット商品になったという面白い話がでております。当然直ぐに商品登録を行ったそうです。中小企業こそ、手抜かりなく、早め早めの手続きをすることが求められます。
特許を取るべき職務発明がなされた場合に、従業員との間でその対価についてもめることのないよう、この機会に改めて貴社の「職務発明」規定について確認しておきましょう。
厚生年金未加入企業はご用心
◆「加入逃れ」の防止
政府は、本来厚生年金保険に入らなければならない企業の加入逃れを防ぐため、国税庁が持つ企業の納付情報から未加入企業を割り出し、指導を強化することを決めました。来春にも着手するとしています。指導に従わない等場合によっては、法的措置により強制的に加入となることもあるようです。
◆これまでの調査と何が違うの?
“国税庁が保有するデータを使って、未加入企業を割り出す”ということです。
これまで、厚生労働省は法人登記されている約449万社の中から未加入企業の調査をすすめていましたが、中には倒産していたり、休眠状態だったりする例も多くあることから、特定作業はスムーズにいきませんでした。
しかし、国税庁が保有するデータは「税金の動きがある=実際に企業活動をしている」ということになり、特定作業が容易になります。保険料負担の関係で未加入となっている企業には影響が及ぶ可能性があります。
当事務所より一言
今回ノーベル賞と発明者権利について取り上げましたが、日本でノーベル賞受賞者が出ると国を挙げて報道合戦となります。この中で私が忘れられない好対照の受賞者報道があります。2008年の益川敏英・小林誠お二人のノーベル物理学賞がそうです。益川先生の方は、元来多舌な方だそうであり受賞に対する色々なコメントがあり、また、益川夫人はお化粧、衣装、装飾品全てにバッチリ隙がない様子でやはり喜びの気持を満面に表しておりました。
一方小林先生の方は、インタビューに対して、まるで七福神の布袋さまのように和やかでうなずくばかりです。そしてご自宅では普段着姿の小林夫人が赤いほっぺの中学校の娘と、狭い台所にカメラが入っているのも気に掛からないようなこんな話をしているのです。「(娘)今日お父さんはおそいのかな〜?」「(小林夫人)そうかもしれないね。お使いに行こうか?」「(娘)ウン。夕飯何にしようか」「(小林夫人)カレーにしようか?」「(娘)そうだね。お父さんも食べられるし」こうして母子はお使いに行くのでした。余りにも対照的な情景に感動すらいたしました。
また、益川先生については、ノーベル賞受賞後執筆された日経「私の履歴書」で、ノーベル賞受賞理由となった「KM理論」について、「あの理論は私(益川先生)が色々な理論を思いつき、英語の得意な小林君はそれを翻訳しただけだ。KMはアルファベット順にすぎず、本来はMK理論だ」と、とても差し障りのあることを平気で記載しております
しかしながら、日本人の一般的な感覚では今回ノーベル物理学賞を同時受賞した85歳の赤崎勇先生の「私一人ではできなかった」のコメントの方が心にストンと落ちる感じがいたします。
「職務発明」権利の帰属
◆職務発明の対価に改めてスポットが
本年のノーベル物理学賞に3人の日本人が受賞いたしました。日本人からノーベル賞受賞者がでると我が事のように嬉しくなるので不思議です。
この話題に関連して、マスコミ報道等では、受賞者の1人である中村修二博士の「青色発光ダイオード事件」を引き合いに、「職務発明」と「その対価(職務発明を行った従業員等に支払われるべき報酬)」に改めてスポットが当てられています。
当職は中村修二博士のお名前は以前から存じ上げておりました。2004年1月東京地裁判決において、この発明の対価として200億円という巨額な支払い命令をかつての勤務先である日亜化学工業から勝ち取ったことは当時大変なニュースとなりました(その後東京高裁で8億4千万円の和解となりましたが、その時中村博士は記者会見で「日本の司法は腐っている」と述べております)。
ノーベル賞受賞者は、宝塚歌劇団ではありませんが、「清く正しく美しく」なければならず、訴訟行為を行う者などはその対極点にあると思っておりましたので、今回の中村博士の受賞は意外でした。逆にみれば、ノーベル財団は中村博士の訴訟行為に対して、研究者として正当な主張であると肯定的な見方をしていると判断しても良さそうです。
◆「職務発明」と「その対価」とは?
職務発明とは、会社の従業員等が職務上行った発明のことであり、現行法令上発明は従業員等に帰属します。
ただし、会社は、職務発明を発明者である従業員等から承継することをあらかじめ社内規程等で定めておき、発明の価値に見合った「相当の対価」を支払うことにより、特許を取得する権利を承継することができます。この意味で就業規則等による定めは重要です。
この「相当の対価」をめぐっては、現在、社内規程が不合理と認められる場合にのみ、裁判所が対価を算出することとされています。会社にとっては、相当と思われる対価を支払っていても従業員等から訴訟を提起されるリスクがあるということです。
このようなリスクを減らすために、特許庁では、特許の権利を会社帰属とする改正法案を来年の通常国会に提出する方針を固めました。なお、その代わりに、適正な報酬の支払いが義務付けられることとなる見込みです。
特許庁のこの報道は中村博士のノーベル賞受賞直後に行われており、中村博士の受賞が新聞発表のインパクトになったのではないかと思われます。
◆中小企業こそ他人事ではない
特許・発明というと、大企業の話…と受け止める向きもありますが、特許出願は中小企業こそ、時として生命線となることもあり得るものです。
同じ業界の大手企業とまともに勝負をしては太刀打ちできなくても、ニッチな部分で多数の特許を取得しており、互角に戦える力を持っている中小企業はたくさんあります。
特許庁ホームページでは、「知的財産権活用企業事例集2014〜知恵と知財でがんばる中小企業〜」が掲載されており、中小企業139社の成功事例が業種別に掲載されておりご参考になると思われます。この事例の中で、例えば、北海道の製菓会社が「カリカリ」というスナック菓子を売り出そうとしている時に、社長夫人が食べたくなり、「カリカリまだある?」と聞いたことをそそまま商品名にして大ヒット商品になったという面白い話がでております。当然直ぐに商品登録を行ったそうです。中小企業こそ、手抜かりなく、早め早めの手続きをすることが求められます。
特許を取るべき職務発明がなされた場合に、従業員との間でその対価についてもめることのないよう、この機会に改めて貴社の「職務発明」規定について確認しておきましょう。
厚生年金未加入企業はご用心
◆「加入逃れ」の防止
政府は、本来厚生年金保険に入らなければならない企業の加入逃れを防ぐため、国税庁が持つ企業の納付情報から未加入企業を割り出し、指導を強化することを決めました。来春にも着手するとしています。指導に従わない等場合によっては、法的措置により強制的に加入となることもあるようです。
◆これまでの調査と何が違うの?
“国税庁が保有するデータを使って、未加入企業を割り出す”ということです。
これまで、厚生労働省は法人登記されている約449万社の中から未加入企業の調査をすすめていましたが、中には倒産していたり、休眠状態だったりする例も多くあることから、特定作業はスムーズにいきませんでした。
しかし、国税庁が保有するデータは「税金の動きがある=実際に企業活動をしている」ということになり、特定作業が容易になります。保険料負担の関係で未加入となっている企業には影響が及ぶ可能性があります。
当事務所より一言
今回ノーベル賞と発明者権利について取り上げましたが、日本でノーベル賞受賞者が出ると国を挙げて報道合戦となります。この中で私が忘れられない好対照の受賞者報道があります。2008年の益川敏英・小林誠お二人のノーベル物理学賞がそうです。益川先生の方は、元来多舌な方だそうであり受賞に対する色々なコメントがあり、また、益川夫人はお化粧、衣装、装飾品全てにバッチリ隙がない様子でやはり喜びの気持を満面に表しておりました。
一方小林先生の方は、インタビューに対して、まるで七福神の布袋さまのように和やかでうなずくばかりです。そしてご自宅では普段着姿の小林夫人が赤いほっぺの中学校の娘と、狭い台所にカメラが入っているのも気に掛からないようなこんな話をしているのです。「(娘)今日お父さんはおそいのかな〜?」「(小林夫人)そうかもしれないね。お使いに行こうか?」「(娘)ウン。夕飯何にしようか」「(小林夫人)カレーにしようか?」「(娘)そうだね。お父さんも食べられるし」こうして母子はお使いに行くのでした。余りにも対照的な情景に感動すらいたしました。
また、益川先生については、ノーベル賞受賞後執筆された日経「私の履歴書」で、ノーベル賞受賞理由となった「KM理論」について、「あの理論は私(益川先生)が色々な理論を思いつき、英語の得意な小林君はそれを翻訳しただけだ。KMはアルファベット順にすぎず、本来はMK理論だ」と、とても差し障りのあることを平気で記載しております
しかしながら、日本人の一般的な感覚では今回ノーベル物理学賞を同時受賞した85歳の赤崎勇先生の「私一人ではできなかった」のコメントの方が心にストンと落ちる感じがいたします。