監督対象事業場の23.7%が「過労死基準」超え!
◆「過重労働解消キャンペーン」重点監督実施結果
厚生労働省が行った「過重労働解消キャンペーン」(昨年11月実施)の重点監督において、監督指導を実施した5,031事業場のうち、73.9%に当たる3,718事業場で労働基準関係法令違反が認められました(2月23日発表)。
最も多かったのは「違法な時間外労働」で、全体の45.9%に当たる2,311事業場が摘発されています。
◆過酷な長時間労働の実態が浮彫りに
違法な時間外労働があった事業場において、時間外・休日労働が最長の者の実績を見ると、80時間超100時間以下が396事業場、100時間超150時間以下が646事業場、150時間超200時間以下が115事業場で、200時間を超えている事業場も38事業場ありました。
厚生労働省が過労死のリスクが高まると位置付ける「過労死ライン」を超えている事業場は、今回の対策対象事業場の23.7%にも上ります。
過酷な長時間労働の実態が浮彫りとなったと言えます。
◆「過労死ライン」とは(発症前の残業時間)
直近2カ月〜6カ月:月残業80時間超
直近1カ月 :月残業100時間超
月残業80時間といってもイメージが湧きませんが、分かりやすい例えでは、月所定労働日数20日を毎日12時間労働(1日の半分を働いている)状況です。これに休日勤務が加われば、1カ月当たりの過労死ライン月残業100時間ともなります。従業員の健康管理上深刻な問題となります。
◆過重労働をなくすために
同省は、「今後も、月100時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組みを積極的に行っていく」とアナウンスしておりました。
しかし、最近4月2日の新聞報道によれば、同省は労基署の立ち入り調査対象企業を月残業時間100時間超から80時間超に引き下げ監視強化をする模様です。月残業80時間超の企業数は約2万社とみられ、塩崎厚労省大臣は本省に司令塔を置いて対策強化を行わせることも表明しております。
過重労働の解消を図るためには、企業において仕事量の調整や適切な労働時間管理、健康障害防止対策などの取組みを進めることが重要です。
改めて自社の労務状況を確認するとともに、多数公表されている実務面における過重労働改善取組事例なども参考にして、必要な対策を講じる必要があります。
◆「使用者賠償責任保険」の加入も有用
社員の突然過労死の事態に及んで、普段元気そうなので大丈夫だと思っていたという会社抗弁は通用いたしません。過労死の認定は社員個別の健康状況ではなく、残業時間が判断基準です。また、残業時間は労基法上会社に課せられた管理データであり把握していなかったとはいえません。
そして、過労死労災認定がおりますと、企業が社員に対する安全配慮義務を怠っていたとして使用者責任の追及が引き続くことになります。近時は損害賠償額が高騰傾向にあり、1億円を超える賠償が求められるケースも少なくありません。中小企業の場合、これだけの金額を支払えば経営の危機に至ることも想定されます。
このような事態に備えた民間保険である「使用者賠償責任保険」は、労災認定された事案について、企業の安全配慮義務違反などを問われ法律上の損害賠償責任を負った場合に備えるものであり、万一の場合に備えた加入も有用と思われます。使用者に対する社員・遺族の損害賠償責任意識の高まりとともにリスクへの備えとしてニーズが高まっております。
介護士・看護師の労災が増加
◆平成27年の労災事故傾向
平成27年における死傷災害発生状況(2月速報)が発表されました。産業全体として前年比などを見た場合、死傷災害はわずかに減少しています。
しかし、その内訳を見てみると、「建設業」や「製造業」では大きく減っているものの、近年の傾向として第三次産業での災害が大きく増加しています。
その中でも特に増加しているのが「保健衛生業」です。介護士・看護師など病院や社会福祉施設で働く方が該当します。平成25年時点と比較して社会福祉施設での死傷災害は15.9%増加しているということです。
◆腰痛と労働者の高齢化
保健衛生業については、「動作の反動・無理な動作」が特に多く、腰痛が職業病のようになっています。次いで、「転倒」も多くなっています。
また、社会福祉施設では、死傷災害の半数が40歳から59歳の層で発生しているというデータもあり、これからの労働力人口の高齢化と併せて、この点はますます重要な課題となるでしょう。
厚生労働省でも、こうした災害防止のための指針等を作成するなどの施策は行っているようですが、一向に減る傾向はありません。
◆介護ロボット等の普及にも時間がかかる
最近では、介護を支援するロボット等、人間の労働をアシストするようなロボット・機器市場が注目されつつあります。しかし、どんな事業所でも導入できるというほどまでにはなっていないようです。
介護機器の導入により、腰痛による休業、早期退職、退職に伴う交代要員の補充等、労務管理面でも手間の軽減に効果があるとされていますが、現状では、現場で業務にあたる個々人の体の使い方を含めた就労環境を見直していくことで対処するのが現実的かつ必要なことのようです。
また、腰痛は体の局所的な酷使のほか、ストレスによっても誘発される場合もあります。ストレスチェック制度がスタートし、これから健康診断のシーズンを迎えますので、この機会に安全衛生や健康管理体制の整備状況について確認してみてはいかがでしょうか。
◆「過重労働解消キャンペーン」重点監督実施結果
厚生労働省が行った「過重労働解消キャンペーン」(昨年11月実施)の重点監督において、監督指導を実施した5,031事業場のうち、73.9%に当たる3,718事業場で労働基準関係法令違反が認められました(2月23日発表)。
最も多かったのは「違法な時間外労働」で、全体の45.9%に当たる2,311事業場が摘発されています。
◆過酷な長時間労働の実態が浮彫りに
違法な時間外労働があった事業場において、時間外・休日労働が最長の者の実績を見ると、80時間超100時間以下が396事業場、100時間超150時間以下が646事業場、150時間超200時間以下が115事業場で、200時間を超えている事業場も38事業場ありました。
厚生労働省が過労死のリスクが高まると位置付ける「過労死ライン」を超えている事業場は、今回の対策対象事業場の23.7%にも上ります。
過酷な長時間労働の実態が浮彫りとなったと言えます。
◆「過労死ライン」とは(発症前の残業時間)
直近2カ月〜6カ月:月残業80時間超
直近1カ月 :月残業100時間超
月残業80時間といってもイメージが湧きませんが、分かりやすい例えでは、月所定労働日数20日を毎日12時間労働(1日の半分を働いている)状況です。これに休日勤務が加われば、1カ月当たりの過労死ライン月残業100時間ともなります。従業員の健康管理上深刻な問題となります。
◆過重労働をなくすために
同省は、「今後も、月100時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組みを積極的に行っていく」とアナウンスしておりました。
しかし、最近4月2日の新聞報道によれば、同省は労基署の立ち入り調査対象企業を月残業時間100時間超から80時間超に引き下げ監視強化をする模様です。月残業80時間超の企業数は約2万社とみられ、塩崎厚労省大臣は本省に司令塔を置いて対策強化を行わせることも表明しております。
過重労働の解消を図るためには、企業において仕事量の調整や適切な労働時間管理、健康障害防止対策などの取組みを進めることが重要です。
改めて自社の労務状況を確認するとともに、多数公表されている実務面における過重労働改善取組事例なども参考にして、必要な対策を講じる必要があります。
◆「使用者賠償責任保険」の加入も有用
社員の突然過労死の事態に及んで、普段元気そうなので大丈夫だと思っていたという会社抗弁は通用いたしません。過労死の認定は社員個別の健康状況ではなく、残業時間が判断基準です。また、残業時間は労基法上会社に課せられた管理データであり把握していなかったとはいえません。
そして、過労死労災認定がおりますと、企業が社員に対する安全配慮義務を怠っていたとして使用者責任の追及が引き続くことになります。近時は損害賠償額が高騰傾向にあり、1億円を超える賠償が求められるケースも少なくありません。中小企業の場合、これだけの金額を支払えば経営の危機に至ることも想定されます。
このような事態に備えた民間保険である「使用者賠償責任保険」は、労災認定された事案について、企業の安全配慮義務違反などを問われ法律上の損害賠償責任を負った場合に備えるものであり、万一の場合に備えた加入も有用と思われます。使用者に対する社員・遺族の損害賠償責任意識の高まりとともにリスクへの備えとしてニーズが高まっております。
介護士・看護師の労災が増加
◆平成27年の労災事故傾向
平成27年における死傷災害発生状況(2月速報)が発表されました。産業全体として前年比などを見た場合、死傷災害はわずかに減少しています。
しかし、その内訳を見てみると、「建設業」や「製造業」では大きく減っているものの、近年の傾向として第三次産業での災害が大きく増加しています。
その中でも特に増加しているのが「保健衛生業」です。介護士・看護師など病院や社会福祉施設で働く方が該当します。平成25年時点と比較して社会福祉施設での死傷災害は15.9%増加しているということです。
◆腰痛と労働者の高齢化
保健衛生業については、「動作の反動・無理な動作」が特に多く、腰痛が職業病のようになっています。次いで、「転倒」も多くなっています。
また、社会福祉施設では、死傷災害の半数が40歳から59歳の層で発生しているというデータもあり、これからの労働力人口の高齢化と併せて、この点はますます重要な課題となるでしょう。
厚生労働省でも、こうした災害防止のための指針等を作成するなどの施策は行っているようですが、一向に減る傾向はありません。
◆介護ロボット等の普及にも時間がかかる
最近では、介護を支援するロボット等、人間の労働をアシストするようなロボット・機器市場が注目されつつあります。しかし、どんな事業所でも導入できるというほどまでにはなっていないようです。
介護機器の導入により、腰痛による休業、早期退職、退職に伴う交代要員の補充等、労務管理面でも手間の軽減に効果があるとされていますが、現状では、現場で業務にあたる個々人の体の使い方を含めた就労環境を見直していくことで対処するのが現実的かつ必要なことのようです。
また、腰痛は体の局所的な酷使のほか、ストレスによっても誘発される場合もあります。ストレスチェック制度がスタートし、これから健康診断のシーズンを迎えますので、この機会に安全衛生や健康管理体制の整備状況について確認してみてはいかがでしょうか。