年末調整の時期となりました
◆準備はお済みですか?
月日の経つのは早いもので、今年もはや12月を迎えました。12月と言えば年末調整の時期です。言うまでもなく、年末調整は1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税金を正しく計算することであり、給与所得者でも他人事ではありません。年末調整で源泉所得税が戻ってくると元々自分の懐から出たものであるとは承知していても嬉しくなります。
◆早めの書類手配が必要です。
年末調整は従業員の申告を基礎として計算しますので、時間的に余裕のある書類取り付けが必要です。下記書類と証憑を早めに従業員から回収し年末調整に間に合う段取りを組みます。
〇平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
〇平成29年分 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
〇平成29年分 住宅借入金等特別控除申告書・・住宅ローンで控除対象となる方の分です。
〇期中入社者は前職場の源泉徴収票
◆控除申告を漏らすと所得税が高くなります
会社からは同じ賃金が支給されていても、単
身者であったり、扶養家族を抱えていたりと、個
人毎に事情は様々です。更には、老人(老親等親族)を扶養する方もいれば、ご自身やご家族が障がい者の場合もあります。所得税法ではこれらの諸事情に対して、所得控除ができる制度になっておりますので、従業員の方には正しい申告を促すことが必要です。特に住宅ローンに対する税額控除は一般的に大きな控除額になりますので漏れがないよう点検が必要です。
◆今年の年末調整変更点
今年の年末調整では、税法そのものの大きな改正はありませんが、平成28年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書から始まっているマイナンバーの記載が欠かせません。従業員の方からのマイナンバー収集・保管には神経を使うところですが、各種申告書類記載等の運用にも充分な管理が求められることとなります。
余談ですが、先日給与計算を承っております顧問先からのご相談で、従業員の方がマイナンバーを紛失したとの話があり、国税庁電話相談センターにマイナンバーなしでも源泉徴収票を受け取って頂けるか聞きましたところ「そのような質問は初めて受けた。マイナンバーを書いて頂くとしか言いようがない」と怒られてしまいました。考えてみればこんなことを聞く方も聞く方ですが、それにしてもそんなに怒らなくても良いではないですかと思いました。例のモリカケ事件でお宅の国税庁長官のことはどうなんですかと余計なことを言いたくなりました。
◆年収の壁(103万円・130万円)
社会保険労務士という仕事をしておりますと、いわゆる年収の壁(103万円・130万円)を痛感いたします。
ある企業のキャリアアップ助成金(パートタイマーの方の労働契約を有期から無期へ転換することで1名当たり30万円が支給される助成金)の申請手続きのため賃金台帳を点検していたところ、対象者の11月と12月だけ労働時間が急減しているのです。理由をお尋ねの所、ご主人の扶養に留まるため103万円までの所得調整を行っている結果でした。案の定支給申請後に東京労働局の助成金審査官からも同じ照会があり、やむを得ず正直に理由を話したところ、審査官も絶句しておりました。ただし、縷々説明を行い助成金は支給していただけました。
この他103万円の壁と言えば、現在多くの企業の家族手当支給基準を税法に準拠して妻の年収103万円未満としているところが多くあります。103万円以上となることで税制では扶養から外され、更に会社の家族手当も貰えなくなるのなら年収調整をしようと思うのは自然です。我が国の女性労働力の活用という家族手当支給基準の見直しは必要なことと思います。
年収の壁といえば、130万円の壁もまた従業員と事業主ともに深刻でしょう。なにしろ130万円を超えると加入義務が発生する社会保険料は高額です。従業員手取額や経営に与える影響も大きくなります。例えば、標準報酬月額11万円(年収ベース132万円)でも毎月の社会保険料は3万円を超過します。これを従業員と会社が折半で負担することから、大きな負担感となります。そして、この負担を忌避して年収130万円の壁が作り上げられ、結果として女性の労働力供給を抑える要因となります。
政府も手をこまねいている訳ではなく補助金を用いて130万円の壁対策を検討中との報道がありました。人手不足が深刻な現在の日本では、労働供給を阻む壁対策が緊急課題と思います。
高年齢者雇用に関する助成金
人手不足を解決するキーワードは、「女性」「シルバー(高齢者)」「外国人」であることは先月号で案内致しました。繰り返しになりますがハローワークを経由して雇用するだけで厚生労働省から下記の助成金受給が見込めます。
「母子家庭の母」:1年間で60万円
「シルバー(60歳〜64歳)」:1年間で60万円
「シルバー(65歳以上)」:1年間で70万円
一方、シルバー(高齢者)に関しては「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構管轄が厚労省とは別なバージョンの助成金を提供しております。この助成金は事業主様が案外気付かれていない潜在的な受給可能性があるためご案内いたします。該当する労働者(雇用保険加入が条件)を雇用している場合には是非ご利用をお勧めします。
1.65歳超継雇用促進コース
1年以上継続勤務している60歳以上の対象労働者が会社にいる
↓
制度改定(就業規則の改定)
↓
定年年齢を就業規則で66歳以上へ変更あるいは定年の定めを廃止
この助成金額:対象労働者数と定年年齢引き上げ幅により20万円から145万円。
(例)対象労働者が1名の会社で定年年齢を65歳から70歳に引き上げたときには40万円が支給されます。
2.高齢者無期雇用転換コース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者(対象労働者)が会社にいる
↓
制度改定(無期転換制度の導入)
↓
当該労働者を無期転換する
この助成金額:対象労働者1名48万円(生産性要件該当事業主は60万円)×無期転換人数。ただし、1年度1事業所10名限度
厚労省キャリアアップ助成金(無期転換コース)との併給はできません。
◆準備はお済みですか?
月日の経つのは早いもので、今年もはや12月を迎えました。12月と言えば年末調整の時期です。言うまでもなく、年末調整は1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税金を正しく計算することであり、給与所得者でも他人事ではありません。年末調整で源泉所得税が戻ってくると元々自分の懐から出たものであるとは承知していても嬉しくなります。
◆早めの書類手配が必要です。
年末調整は従業員の申告を基礎として計算しますので、時間的に余裕のある書類取り付けが必要です。下記書類と証憑を早めに従業員から回収し年末調整に間に合う段取りを組みます。
〇平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
〇平成29年分 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
〇平成29年分 住宅借入金等特別控除申告書・・住宅ローンで控除対象となる方の分です。
〇期中入社者は前職場の源泉徴収票
◆控除申告を漏らすと所得税が高くなります
会社からは同じ賃金が支給されていても、単
身者であったり、扶養家族を抱えていたりと、個
人毎に事情は様々です。更には、老人(老親等親族)を扶養する方もいれば、ご自身やご家族が障がい者の場合もあります。所得税法ではこれらの諸事情に対して、所得控除ができる制度になっておりますので、従業員の方には正しい申告を促すことが必要です。特に住宅ローンに対する税額控除は一般的に大きな控除額になりますので漏れがないよう点検が必要です。
◆今年の年末調整変更点
今年の年末調整では、税法そのものの大きな改正はありませんが、平成28年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書から始まっているマイナンバーの記載が欠かせません。従業員の方からのマイナンバー収集・保管には神経を使うところですが、各種申告書類記載等の運用にも充分な管理が求められることとなります。
余談ですが、先日給与計算を承っております顧問先からのご相談で、従業員の方がマイナンバーを紛失したとの話があり、国税庁電話相談センターにマイナンバーなしでも源泉徴収票を受け取って頂けるか聞きましたところ「そのような質問は初めて受けた。マイナンバーを書いて頂くとしか言いようがない」と怒られてしまいました。考えてみればこんなことを聞く方も聞く方ですが、それにしてもそんなに怒らなくても良いではないですかと思いました。例のモリカケ事件でお宅の国税庁長官のことはどうなんですかと余計なことを言いたくなりました。
◆年収の壁(103万円・130万円)
社会保険労務士という仕事をしておりますと、いわゆる年収の壁(103万円・130万円)を痛感いたします。
ある企業のキャリアアップ助成金(パートタイマーの方の労働契約を有期から無期へ転換することで1名当たり30万円が支給される助成金)の申請手続きのため賃金台帳を点検していたところ、対象者の11月と12月だけ労働時間が急減しているのです。理由をお尋ねの所、ご主人の扶養に留まるため103万円までの所得調整を行っている結果でした。案の定支給申請後に東京労働局の助成金審査官からも同じ照会があり、やむを得ず正直に理由を話したところ、審査官も絶句しておりました。ただし、縷々説明を行い助成金は支給していただけました。
この他103万円の壁と言えば、現在多くの企業の家族手当支給基準を税法に準拠して妻の年収103万円未満としているところが多くあります。103万円以上となることで税制では扶養から外され、更に会社の家族手当も貰えなくなるのなら年収調整をしようと思うのは自然です。我が国の女性労働力の活用という家族手当支給基準の見直しは必要なことと思います。
年収の壁といえば、130万円の壁もまた従業員と事業主ともに深刻でしょう。なにしろ130万円を超えると加入義務が発生する社会保険料は高額です。従業員手取額や経営に与える影響も大きくなります。例えば、標準報酬月額11万円(年収ベース132万円)でも毎月の社会保険料は3万円を超過します。これを従業員と会社が折半で負担することから、大きな負担感となります。そして、この負担を忌避して年収130万円の壁が作り上げられ、結果として女性の労働力供給を抑える要因となります。
政府も手をこまねいている訳ではなく補助金を用いて130万円の壁対策を検討中との報道がありました。人手不足が深刻な現在の日本では、労働供給を阻む壁対策が緊急課題と思います。
高年齢者雇用に関する助成金
人手不足を解決するキーワードは、「女性」「シルバー(高齢者)」「外国人」であることは先月号で案内致しました。繰り返しになりますがハローワークを経由して雇用するだけで厚生労働省から下記の助成金受給が見込めます。
「母子家庭の母」:1年間で60万円
「シルバー(60歳〜64歳)」:1年間で60万円
「シルバー(65歳以上)」:1年間で70万円
一方、シルバー(高齢者)に関しては「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構管轄が厚労省とは別なバージョンの助成金を提供しております。この助成金は事業主様が案外気付かれていない潜在的な受給可能性があるためご案内いたします。該当する労働者(雇用保険加入が条件)を雇用している場合には是非ご利用をお勧めします。
1.65歳超継雇用促進コース
1年以上継続勤務している60歳以上の対象労働者が会社にいる
↓
制度改定(就業規則の改定)
↓
定年年齢を就業規則で66歳以上へ変更あるいは定年の定めを廃止
この助成金額:対象労働者数と定年年齢引き上げ幅により20万円から145万円。
(例)対象労働者が1名の会社で定年年齢を65歳から70歳に引き上げたときには40万円が支給されます。
2.高齢者無期雇用転換コース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者(対象労働者)が会社にいる
↓
制度改定(無期転換制度の導入)
↓
当該労働者を無期転換する
この助成金額:対象労働者1名48万円(生産性要件該当事業主は60万円)×無期転換人数。ただし、1年度1事業所10名限度
厚労省キャリアアップ助成金(無期転換コース)との併給はできません。