2024年02月号

法令通りの雇い止めでもストライキ!

労基法施行規則改定により、令和6年4月より労働契約締結時のルール(雇用期間上限の明示、雇用期間上限設定理由の明示)が厳格化されることは先月号でご案内の通りです。この改定を反映しない労働契約では雇い止めの際に手続き瑕疵として雇い止めが認められない恐れがありますのでご注意願います。

それでは、手続きを法令通り行い雇い止めを行えば問題が出ないかというと、必ずしもそうではないようです。大手アウトドア用品メーカー「パタゴニア」札幌北店で雇い止めを受けた女性パート社員が昨年12月寒空の中で一人ストライキに入り、大きく全国版で新聞報道されました。

新聞報道を見る限り会社側に手続きの瑕疵はありません。入社時に5年間の有期契約であることをしっかり説明し、納得したことを条件として雇用契約を締結しております。有期労働契約更新は都度適切に行われ、雇い止めは余裕をもって6か月前に通知されました。それでは何故ストライキにまで訴えたのでしょうか。報道によれば、「雇い止めされた社員を見ていると働く者の権利がないがしろにされている、パタゴニアには無期転換逃れはそぐわない」が雇い止めされた社員の主張です。
しかしながら、これから判断すると会社が労働者の権利侵害を行っているとは思えません。労働契約法に従ったルール運用を行っております。それでもストライキが行われ大きく新聞報道され会社名誉に関わっております。

今回のパタゴニアのことは別として、私の経験からすると雇い止めされた社員はこのままでは済まされないという憤怒が様々な形のハレーションになるようです。会社が労基法違反を行っていると労基署へ駈け込むことや、ハローワークへ当初の求人募集より劣悪とクレームする、飲食店であれば食品衛生法違反を犯していると保健所へ申し立てる、介護事業所であれば施設利用者を虐待していと行政へ訴える等々会社が困ることを行う労働者がいることも残念ながら見受けられます。また、労働者側へ偏ったマスコミ報道がされることもあります。

勿論このようなことがまかり通る訳はありませんが、労働者にはやはり雇い止めは生活の糧を失う大きな衝撃であり、ある意味で個人の尊厳にも及ぶことでもあります。法律通りだから問題ないとせず、やはり雇い止めされる労働者の心情に寄り添うことがトラブル回避につながることになります。

消費者庁が「送料無料」表示見直しを呼びかけ

 最近はインターネットを利用した物品購入が多くなりましたが、「送料無料」とあると得したような嬉しい気持ちになります。ところが消費者庁が通販事業者に「送料無料」表示の見直しを呼びかけています。
「物流の2024年問題」を背景として、送料は無料ではなく、送料負担者がおり、労働コストがあることを消費者に理解してもらうことを趣旨としております。宅配して貰うとその分の物流コストと配達労働力が必要であるとの認識転換を図るものです。
表示変更方法の具体例として、「送料当社負担」や、「○○円(送料込み)」という価格表記に変更することを挙げています。


事務所より一言

最近夜の徒然にNetflixを見ましたら映画「PLAN75」がアップされました。見終わった後で日本のこれからを考えさせられ、むしろ寝入りが悪くなりました。

舞台は超高齢化社会になった日本、若者たちは自分たちの生活が苦しいのは年寄りが長生きするからだとの怒りで老人虐殺事件が多発したことから、日本政府は
75歳以上高齢者に「死ぬ権利」を認める法律「PLAN75」を施行しました。実は「死ぬ権利」とは名ばかりで、75歳以上の高齢者に死ぬことを推奨するものでした。申し込みは役所窓口で簡単な手続きで出来、申込者には一時金10万円が交付され、途中で心変わりがないように専属のオペレーターが申し込み後死ぬまでフォローを行います。最後の時は吸引器で苦痛なく迎えることができ遺体は手間暇ないよう廃遺物として処理されます。

「PLAN75」では、高齢のため勤務先を解雇され賃貸住宅退去も迫られたミチ(倍賞千恵子)が、高齢であることで経済的社会的に孤立し、行き付くところが「PLAN75」になるまでの苦悩と悲しみが描かれております。ミチの高齢同僚が職場で倒れ、一緒に解雇された友達が孤独死で発見され、自分も働き先がなく途方に暮れて「PLAN75」に申し込みます。ラストシーンでは思い直したミチが吸引器を外して逃れ美しい夕日に心奪われたところで終わります。でもこれはハッピーエンドではありません。その後ミチがどうなるのか「PLAN75」では何も示唆しておりません。

「PLAN75」は決して荒唐無稽な話ではないのでしょう。実際日本でも高齢者の平均寿命が延び、厚生年金と医療費の膨大が国家財政の深刻な課題となっております。厚生年金切り下げに挑む政党は政党生命を懸ける胆力が必要です。また、老人医療制度は国、都道府県、市町村、協会けんぽ、健保組合、共済組合から幅広い拠出金を求めており、各拠出者から負担増の悲鳴が上がっております。このような手詰まりの社会情勢に「PLAN75」は妙な説得力をもつ映画となっております。映画中では国は「PLAN65」も検討となっています。この映画は就寝前に視聴するには深刻過ぎるテーマと改めて思います。

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