2023年08月号

君、早く育休取ってくれ給え!

◆山梨県庁の育休取り組み
 山梨県庁では男性職員が在宅育休する期間を「最低3か月」とする取り組みを開始したそうです。これは全国自治体で初めてのことだそうです。

男性が育休を取る事自体まだまだ日本の社会慣行になっていない中で、男性育休取得「最低3か月」は注目すべき情報です。この目標をバックアップするために、県庁は育休取得した男性職員の上司には人事評価で加点を行うことや、同僚職員には勤勉手当を支給するそうです。

女性が育休取得をためらう理由に同僚に仕事のしわ寄せを掛けたくないという思いがあります。このような気兼ねをなくし育休を取りやすくするために、企業によっては女性の同僚に対して手当支給制度を設けるところもありますが、男性育休に対し上司への加点まで踏み込んだのは山梨県が最初です。

この政策の背景には、山梨県が人口減少危機突破宣言を出す程に人口減少が続いていることから、男女ともに育休支援を本気で行うというメッセージを込めたとのことです。ただし人口減少に危機感を抱いているのは山梨県に限らず多くの地方自治体も同様であり、今後追随する都道府県もあるかも知れません。

それにしても、育休対象男性職員が仮に育休を取らなければどうなるのでしょうか。上司は加点されず、同僚には勤勉手当が支給されません。このため、上司からは「君、早く育休取ってくれ給え!」同僚からは「お願い、育休取って」と責められる可能性もあります。いわば育休逆ハラスメントの対策も考慮すべきでしょう。

今年も最低賃金が大幅引き上げ

◆最低賃金の引き上げ
 2023年度の都道府県毎の最低賃金が8月18日に出そろいました。毎年10月から最低賃金の洗い替えがありますが、今年も大幅な引き上げになります。

東京 : 1,113円(+41円)
神奈川:1,112円(+41円)
千葉 :1,026円(+42円)
埼玉 :1,028円(+41円)
北海道:960円(+40円)

従来は国の審議会が示した目安金額通り各都道府県が洗い替えするパターンが多かったのですが、今年は都道府県独自の判断で更に上乗せしているところがあります。最大の上乗せは佐賀県の8円です。このように地方で最低賃金の大きな上乗せが続く背景には、他県より低いと人材が流失し人手不足となる懸念があります。最高の東京1,113円と最低の岩手893円では220円の差があり、1月160時間労働では35,200円の月額賃金差額となります。

◆最低賃金見直しのインパクト
最低賃金という言葉からすると、普通の労働者は最低賃金よりも高い賃金を貰っているようですが、現在最低賃金を適用されている労働者も少なくありません。このような中で最近の諸物価引き上げや経済再開の人手不足をカバーすることが、最低賃金見直しへの強いインパクトになっております。一方中小事業主様には大きなコストアップインパクトにもなります。

◆パートアルバイト時給は要チェック
パートアルバイトを多く雇用されている事業主様は、現在の時給が最低賃金を上回っていること、そして10月以降改定の基準もクリアーする確認をお願い致します。地域の最低賃金未満で労働者を働かせると、最低賃金法により50万円の罰金が科せられますのでご注意願います。

生成AIサービス利用時の注意点

◆目覚ましい発展を遂げる生成AI
 ChatGPT等の生成AIサービスが話題です。プロンプトと呼ばれる質問・指示に対し、自然な文章で膨大なデータから導いた回答を返してくれることから、生産性の向上などに寄与するとされています。その反面、法的な整備が追いついていない点も多く、利用には注意も必要です。なかでも、個人情報や秘密情報の入力は避けるよう注意喚起されています。入力した内容はデータ学習に使用されることがあり、思わぬ流出の懸念があるからです。生成AIサービスを検討する企業において使用ルールを定めることは必須といえるでしょう。

◆使用ルールの策定
 では、どのようなルールを策定すればいいのでしょうか。参考になるのが、一般社団法人日本ディープラーニング協会による「生成AIの利用ガイドライン」です。生成AIの活用を考える組織がスムーズに導入を行えるように、利用ガイドラインのひな型が公開されています。組織の目的やポリシー等に照らして、必要な追加や修正を加えることができます。「簡易解説付きガイドライン」では、データ入力に際して注意すべき事項、生成物を利用するに際して注意すべき事項に触れられており、社内での検討に役立つ内容になっています。
 「気づかないうちに社員が不適切な使用をして、問題に発展してしまった」ということのないよう、早めな対策が必要です。
【一般社団法人日本ディープラーニング協会「資料室」】
https://www.jdla.org/document/#ai-guideline

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