2024年06月号

自己都合退職の給付制限期間が短縮

自己都合退職の場合給付制限期間は長い間3か月とされておりましたが、令和2年10月1日以降退職では2か月に短縮されました。そして来年4月1日以降は1カ月に短縮されます。

今改めて思えば、失業者が雇用保険給付を受けるまで、昔は3か月無収入で放り出されていたわけです。終身雇用を前提とした雇用慣行の下で自己都合退職はけしからぬこととされ、3か月のペナが与えられた様なものです。それが2か月に短縮となり、今度は1か月になります。

この背景には産業界の人材流動化が待ったなしの状況があり、転職を拘束するような給付制限期間が見直されるということでしょう。ただし、短期で入退社を繰り返すのを防止するため、5年間で3回以上正当な理由のない自己都合退職を行った人の給付制限期間は3カ月とされます。

社会保険労務士の業務範囲にハローワーク提出用離職票の発行があります。退職者が失業手当を受けるためには離職票が必要ですが、最近は退職者の離職票リクエストが余りありません。つまり、失業手当を受けることなく退職後すぐに新たな企業で勤め始めるため、離職票の出番がなくなっているのでしょう。

令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」から

関東各地で30度を超える地域が多くなり熱中症対策が不可欠になります。厚生労働省が昨年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)の取りまとめを公表しましたのでご参照願います。

◆全体の約4割が建設業と製造業で発生

令和5年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は、1,106人(前年比279人・34%増)であり、全体の約4割が建設業と製造業で発生していました。死亡者数は31人(前年比1人・3.3%増)で、業種別では、建設業で12人と最多になりました。

◆熱中症の死傷者数の約8割は7月または8月

2019 年以降の月別の熱中症の死傷者数をみると、7月または8月に約8割が発生しています。時間帯別にみると15時台が最も多く、次いで11時台が多くなっていました。このほか、日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化して病院へ搬送されるケースも見られました。
また、年齢別にみると、全体の約5割が50歳以上でした。高齢者には特に熱中症対策が必要です。

◆厚生労働省の対策キャンペーンと現場の対策

熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりするなどして発症する障害の総称です。
厚生労働省では、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を5月1日から9月30日まで実施しています。
それぞれの現場では、@暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を適切に実施すること、A作業を管理する者および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと、B糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対して医師等の意見を踏まえた配慮を行うこと、について重点的に取り組むこととしております。

介護離職の企業対応策

◆介護離職抑止の必要性

高齢化日本の社会問題として介護離職があります。親族を介護するために止む無く離職する社員は会社にとっても大きな戦力損失です。親族介護を抱える社員に対して会社全体で社員サポートを行い離職防止することは今後ますます重要な施策となります。

経団連調査によると、企業が介護との両立支援策として育児・介護休業法に規定されている項目以外で導入している制度や仕組みとしては、下記のようなものが挙げられております。

・テレワーク(在宅勤務) 80.1%
・介護を事由に取得できる積立有給休暇導入(失効年休の積立休暇など) 73.3%
・所定労働時間内の一時的な離席(時間単位年次休暇の利用などを含む) 58.8%
・相談窓口の設置 52.2%
・介護をしている社員の人事異動・転勤についての配慮 50.4%

◆積立有給休暇制度

これらのうち、2番目に導入割合の高い積立有給休暇制度とは、取得しなければ通常2年で時効消滅してしまう年次有給休暇を、一定期間積み立てておけるようにする制度です。法定の制度ではありませんが、そのメリットは、なんといっても人材採用・定着が有利になることです。

会社が介護離職防止に向けて多様な働き方を支援することは自社のイメージアップを図るとともに、従業員のモラールアップにもつながります。

◆本制度検討時のポイント

本制度導入にあたっては、運用方法を明確にして就業規則に定める必要があります。

・積立有休の取得用途に制限を設ける{介護・病気療養・ボランティア活動など}
・1年度あたりの積立て可能日数の上限を設ける(5日など)
・最大積立日数も上限を設ける(30日、60日など)
・連続で取得可能な日数の制限規定
・退職の際の取扱い(退職時に取得可能とするか、買い取るかなど)

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