最低賃金が今年大幅に引き上げられます

◆最低賃金の状況
　毎年１０月に最低賃金の見直しがありますが、今年は日本全国各都道府県で大幅な引き上げになります。

東京 ： １，０７２円（＋３１円）
神奈川：１，０７１円（＋３１円）
千葉 ：９８４円（＋３１円）
埼玉　：９８７円（＋３１円）
北海道：９２０円（＋３１円）

これまでは国の審議会が示した目安金額通り各都道府県が上乗せするパターンが多かったのですが、今年は都道府県独自の判断で１円から３円を更に上乗せしているところがあります。特に元々賃金水準が低い高知や沖縄などの地方圏で上乗せが目立っております。高知は上乗せしなければ単独全国最下位の不名誉になるという危機感があったとされています。

◆最低賃金見直しのインパクト
最低賃金という言葉からすると、一般の労働者は最低賃金よりも高い賃金を貰っているようですが、現在最低賃金を適用されている労働者も少なくありません。このような中で最近の諸物価引き上げや経済再開の人手不足をカバーすることが、最低賃金見直しへの強いインパクトになっております。

◆パートアルバイト時給は要チェック
私は社会保険労務士という商売柄お店等で張り出してある求人ポスターが気になります。現在でも東京都の最低賃金１，０４１円を下回った求人を堂々と掲示している会社があります。地域の最低賃金未満で労働者を働かせると、最低賃金法により５０万円の罰金が科せられることをご存じないのでしょうか。
パートアルバイトを多く雇用されている事業主様は、この機会に現在の時給が最低賃金を上回っていること、そして１０月以降改定の基準もクリアーする確認をお願い致します。

◆国際的な批判
皆様の会社では外国人技能実習制度をご利用でしょうか。この制度は本来技術移転による途上国支援で始まったものですが、実態は外国人を安価な労働力として使うダミーの制度であると日本は国際的批判を浴びています。

７月19日、米国務省は世界各国の人身売買に関する2022年版の報告書を発表した中で、日本では外国人技能実習制度の参加者が「強制労働」をさせられているとの報告があると指摘。人身売買に関与した悪質な仲介業者や雇用主の責任を日本政府が追及していないと批判されました。今の日本で「人身売買」や「強制労働」等物騒なことは考えも付かないと思っておりましたが、どうやら違うようです。

◆実際の状況
７月27日、厚生労働省から「外国人技能実習生の実習実施者に対する令和３年の監督指導、送検等の状況」が公表されました。その実態は次のとおりです。

・労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9,036事業場（実習実施者）のうち6,556事業場（72.6％）。
・主な違反事項は、(1)使用する機械等の安全基準（24.4％）、(2)割増賃金の支払（16.0％）、(3)労働時間（14.9％）の順に多いとのことです。
・重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは25件にもなります。

◆実習生妊娠出産で強制帰国
　8月21日の日経報道によれば、外国人技能実習生が妊娠出産をした際に、勤務先企業や仲介業者から強制帰国を迫られる不法な事例が見られるとのことです。中には妊娠した場合には帰国するという事前誓約書まで書かせる悪質なケースもあるそうです。妊娠出産を理由とした不当な取り扱いは男女雇用機会均等法で禁じられており、技能実習生にも当然適用されるべきものです。強制帰国や解雇を恐れた技能実習生が乳児を遺棄する事件が広島県や熊本県で発生しております。

◆政府の制度見直し方針と企業対応
古川法務大臣は７月29日、技能実習制度の見直しに向けた論点を発表しました。年内にも政府の関係閣僚会議の下に有識者会議を設置し、この論点をたたき台にした具体的な見直しの議論に着手する方針です。政府は抜本的な制度の見直しを急ぎます。
技能実習生を受け入れている企業は、制度の見直しを待つまでもなく、まずは法令違反を疑われるような実態がないかの自主点検が必要です。

事務所から一言
　私事ですが、昨日8月22日に第4回目のワクチンを打ちました。当日直前までワクチン接種に気持ちの迷いがありましたが、現下のコロナ蔓延状況でついに重い足を病院に運びました。
　思えば第1回、第2回はモデルナでした。第1回が軽く済んだので、第2回を甘く見ていたところ、接種当日夜から39度の熱が3日間続き、6月にかかわらず掛布団を重ね震えながら症状が治まるのを待ちました。まるで着衣のままプールに入ったようなずぶ濡れ状態でした。ある事業主様も同じような酷い目に遭い、3回目以降の接種はパスしているとのことでした。
　第3回目と第4回目はファイザーを選択して幸いにも特にこのような強い副作用はありませんでした。本当に一日でも早いコロナの収束を祈ります。