2021年10月号

健康保険証の社員直送が可能に

◆これまでは必ず会社経由でした
当事務所では、会社に新入社員が入社した時には健康保険証をなるべく早めに渡してあげたいと迅速な手続きを心掛けております。保険証が紛失した、あるいは結婚等で氏名変更等の場合も同様です。申請手続きを受けた保険者(協会けんぽや健保組合等は)はこれまで健康保険証を必ず会社を経由して本人に渡すことになっておりました。

しかしながら、テレワーク等在宅ワークが普及した現在では、保険者が支障がないと認めるときは、保険者から社員に対して健康保険証を直接交付すること等が可能となりました(10月1日からです)。    

以前実際にあったことですが、新人の健康保険証が届かないと会社から相談を受けましたので、協会けんぽへ確認のところ、相当前に発送済みとのことでした。会社でよく調べて頂いたところ、会社の郵便物の束から健康保険証が入った協会けんぽ封筒がポロリと出てきたということがあります。新入社員が一番嬉しいと思うことは、まずは社長に褒められたこと、二番目には最初の給料をもらったこと、そして三番目には健康保険証を貰い会社の一員になったことを実感することではないかと思います。健康保険証は大切にお取り扱いください。

◆健康保険証の返却は会社経由で変わらず
 一方、社員退職時の健康保険証の返納については、事業主経由を省略できません。社員が資格を喪失したときは、これまでと同様に、会社は遅滞なく被保険者証を回収して保険者に返納しなければなりませんのでご注意下さい。

◆健康保険証到着前の医療機関受診
 健康保険証の申請から発行までに通常10日前後、新年度開始の4月では2週間以上かかることがあります。保険証到着前にやむを得ず医療機関で受診することがあります。このような時はどうしたら良いのでしょうか。

受診日が予め分かっている場合には、事前に健康保険被保険者資格証明書を発行してもらう方法があります。年金事務所へ出向けば即日交付され、有効期間は証明日から20日以内です。一方、健康保険証発行前に突発的な病気で病院へ駆け込んだときには、一旦は全額自己払いを行い、保険証到着時点で保険扱いに変更し、差額を返却して貰えます。保険証の到着が遅れて月を跨いだ場合には療養費支給申請書(立替払い)で協会けんぽへ請求を行いますが、手続き的には手間暇が掛かりますのでご注意下さい。

令和2年度 監督指導による賃金不払残業の是正結果から

◆支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり658万円(企業には辛い追加負担です)
厚生労働省は、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」として、労働基準監督署が監督指導を行い、令和2年度(令和2年4月から令和3年3月まで)に不払いとなっていた割増賃金が支払われたもので、支払額が1企業当たり合計100万円以上である事案を取りまとめて公表しました。
 これによれば、是正企業数1,062企業(前年度比549企業の減)、対象労働者数は6万5,395人(同1万3,322人の減)で、支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり658万円、労働者1人当たり11 万円にのぼりました。

◆改めて労働時間管理の確認を
令和2年度はコロナの影響で、是正企業数や対象労働者数は対前年で減少したものの、やはり割増賃金不払いは依然として多くの企業が指導を受けています。厚生労働省は、あわせて「賃金不払残業の解消のための取組事例」についても紹介しています。そこでは企業が実施した解消策として、@代表取締役等からの賃金不払残業解消に関するメッセージ(労働時間の正しい記録、未払賃金の申告)の発信、A管理職に対する研修会の実施、B定期的な実態調査等が挙げられています。
厚生労働省では、引き続き賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとしています。コロナが落ち着きを見せれば労基署の企業入検数も増加すると思われますので改めて労働時間管理も点検が必要です。36協定が期限切れになっていないか改めての確認も必要です。

生活支援策をまとめたリーフレット

◆コロナ禍で生活苦を抱える人が増加
 引き続くコロナ禍により、生活苦を抱える人が増加しています。非正規雇用労働者については、シフトが減少するなど特に深刻な影響が出ています。ほかにも、将来への不安や、生活様式の変更によって精神的な疲れを感じ、これまで通りに働くことが難しいと感じている方もいるでしょう。国はさまざまな支援策を用意していますが、日々更新される情報を集めきれない、どこに相談していいのかわからないという声もあります。

◆支援策をまとめた有用なリーフレット
 そんな不安を抱えるすべての方のために、厚生労働省は、公的な支援策をまとめたリーフレット「生活を支えるための支援のご案内」を公表しています。内容は随時更新されており、@お金(生活費や事業資金)に困っているとき、A新型コロナウイルスへの感染等により仕事が減少したとき、Bお仕事をお探しの場合、C小学校等の臨時休業等に伴い子どもの世話が必要なときといった困りごと別に、各種支援策がわかりやすくまとめられています。相談したい事項別の相談窓口一覧も掲載されています。いずれも雇用者、労働者の双方にとって知っておきたい情報です。事業主様も一読の価値があるとお勧めします。

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