雇用保険料率が引き下げられます
 厚生労働省は平成24年度の雇用保険料を0.2%引き下げると発表いたしました。現行の雇用保険料率から、事業主と従業員負担をそれぞれ0.1%軽減するものであり、雇用保険に加入している従業員からの4月分以降給与引き去りにはご注意願います。

4月以降の雇用保険適用料率(一般企業)
会社負担 :0.85%(旧0.95%)
従業員負担:0.5%(旧0.6%)
合計    :1.35%(旧1.55%)

各事業とも月額賃金が30万円の従業員の場合、従業員と会社それぞれが毎月300円保険料軽減となる計算です。

会社負担保険料率が高い理由は「雇用安定事業」及び「能力開発事業」(雇用保険二事業)分が上乗せされているためですが、事業主の皆様に支給される助成金ファンドはこの雇用保険二事業で作られます。

3年以内既卒者採用助成金が延長
◆助成金適用期間が延長
  厚生労働省では、これまで平成21年3月卒業以降の既卒未就職者が労働マーケットに円滑に吸収されるように、下記の助成金制度を通して事業主に雇用拡大を働き掛けておりました。
  
この制度は本年3月末までの時限立法でしたが、最近の厳しい既卒者採用内定状況を勘案し、以下の通り助成金適用期間を延長することとなりました。

(現行規程)
 平成24年3月末までに採用すること
(延長後の規程)
 平成24年6月末までにハローワーク
 の紹介を受け、7月末までに採用を行えば助成金の対象とする。

◆本助成金の内容
.「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」・・・当初のトライアル期間3ヶ月間毎月10万円。正規雇用となり3カ月経過後に50万円が支給されます(合計80万円
.「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」・・・直ちに正社員として採用後、6カ月経過後に100万円支給

オリンパスの内部通報制度問題
 昨年11月にオリンパスの巨大粉飾決算が露呈され、企業ガバナンスのあり方が改めて問われていることはご存じの通りです。企業ガバナンスを維持するためには適切な内部通報制度が不可欠ですが、オリンパスでは内部通報した人間を不当配転したとして従業員から訴えられ、東京高裁で逆転敗訴しております(平成23年8月31日判決)。今月号では、オリンパスの不当配転敗訴を通して内部通報制度をご案内いたします。

◆内部通報制度とは
企業における内部通報制度とは、法令違反や不正行為等のコンプライアンス違反の発生を知った社員等が、会社の職制を通さず適切に対応できる窓口に直接通報することができる仕組みのことです。

企業により、名称は「内部通報110番」・「ホットライン」・「コンプライアンス相談窓口」などさまざまですが、その特徴は匿名性にあります。社員が実名で会社の罪状を告発すれば、すねに傷ある権力者から、叩かれ、もみ消され、あげくは不当配転や別な罪を作り上げられ解雇までされかねません。そのため、告発者を保護するために通常は告発先を顧問弁護士などの第三者として運営しております。

◆オリンパスの不当配転判決
 今回事件の発端となったのは、オリンパスが不正行為(取引先社員の不当な継続的引き抜き)を行っていると社員が告発したところ、告発を受けたコンプライアンス室が担当役員に話を行い、その結果、告発者はこれまでのキャリアと関係の無い職場に次々配転させられ、給与が減額され、実現不可能な目標を押しつけられた上に駄目社員としてパワーハラスメントを受けたことが東京高裁で認められております。

◆オリンパスの内部通報制度
 なぜオリンパスでは内部通報者が保護されなかったかというと、内部通報の匿名性が原則拒否されていたことが明らかになりました。その結果オリンパスの内部通報制度はほとんど利用されていなかったということです(平成23年12月31日付日経新聞)。

 オリンパスの監査役会では第三者直結の外部通報窓口を何回か提案しても、これを潰したのが当時のコンプライアンス担当役員の山田前監査役であり、山田前監査役は問題となった損失隠しを主導していた人物とされております。

 巨額の粉飾決算を主導する人間が、第三者の外部通報窓口設置を拒否することはむしろ当然のことと思われます。昨年8月の不当配転に対する東京高裁判決と、同年11月発覚した巨額粉飾事件は企業ガバナンスを無視する社風として底流で繋がっていると思われます。

 人間である以上会社の権力者でも間違ったことを行うこともあるし、時には悪い事を行うこともあるかもしれません。これをいち早く是正するために内部通報制度を適切に運用しなくてはならないということが今回のオリンパスの一連の事件の教えではないかと思います。


当事務所より一言
 今は節分の時期です。私たちが子供の頃は、自分の年の数だけ節分の豆を食べるよう親から言われました。今となって年の数だけ本当に食べたら大変な事態になります。思えば遠くへきたものだと改めて思い至ります。

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