か・り・て・き・た・ね・こ

◆昔からあったパワーハラスメント
先月号で「不二ビューティ」高野友梨社長のパワーハラスメント事件を取り上げました。労働環境の改善を求めてエステ・ユニオンに加入した仙台支店の女性社員に対して、高野社長が急遽仙台を訪れ管理職等総勢18名がいる中で、2時間半にわたりこの社員へ強圧的な問い詰めを行い、この社員は精神的ショックを受けて出社できなくなった事件です。
そもそもパワーハラスメントの言葉自体は最近のものですが、実際は昔から存在しておりました。それにもかかわらず最近になってやにわにクローズアップされたのは、社員の権利意識の高まりとネットによる情報収集が容易になったことがあり、また、その一方で加害者(会社・管理者・同僚等)が「かつての常識」から抜け出せていないことに原因があります。「かつての常識」では不始末を行った社員を会社等が目一杯怒り上げて、それでも社員は涙を堪えてついてくる、そのような図式がありましたが、いま同じようなことをしたらパワハラ問題に発展してしまう可能性があります。

◆「怒る」と「叱る」
 では、パワハラ問題となることを恐れて、会社は社員を指導できなくなってしまうのでしょうか。決してそのようなことはありません。最初から完璧な社員はおりません。社員は指導を受けることで成長するものです。この時に往々間違えるのが、社員を怒ってしまうことです。良く言われることですが、怒ることは感情に任せて自分の気持ちを晴らすことであり、その一方、社員を成長させるために教育的指導を行うことが叱ることです。私の管理職経験からもこの使い分けは実は大変難しいことです。私が損害保険会社在勤時代、ある役員はミスをした部下を大きな声で厳しく叱るのですが、顔は笑っているという名人芸で有名でした。この領域までは行かないにしても、自分が部下に大きな声を出している最中に、これは怒りなのか叱りなのか頭の片隅で冷静に判定している自分がいれば良いと思います。

◆叱り方(か・り・て・き・た・ね・こ)
 パワハラが事件として提訴されたときには、加害者が具体的にどのような状況で如何なる言動や行動を行ったかが問われます。「不二ビューティ」高野友梨社長の事件の様に、密かに録音され、マスコミにそのまま露出されてしまうこともありえます。このため、叱る方もどうやったらパワハラにならないかを習得する必要があります。ここでパワハラにならない方法をまとめた面白いワード(か・り・て・き・た・ね・こ)をご案内いたします。
「か」 感情的にならない
「り」 理由を話す
「て」 手短に
「き」 キャラクター(人格)に触れない
「た」 他人と比較しない
「ね」 根に持たない
「こ」 個別に叱る
◆キーワードは「か」(感情的にならない)
(か・り・て・き・た・ね・こ)の中で最重要なキーワードは「か」(感情的にならない)です。部下の指導は管理職の職務ですが、管理職とて人間ですから、普段のイライラやストレスのため不本意ながらパワハラ的言動に走ってしまうこともあります。だからこそ管理職は自分の立場を自覚し言動・行動に対する謙虚さが求められます。判例でも、部下に厳しい部長に対して「人前で、大声を出して感情的、高圧的かつ攻撃的に部下を叱責する」態度をパワハラにあたるとして、他の要因も重なりうつ病を発症した職員に公務災害の認定を下しております(名古屋高判22.5.21)
この部長は(か・り・て・き・た・ね・こ)の真逆なことをやった結果、部下をうつ病にさせてしまったのでした。
なお、私の経験では個別に叱る場合、異性に対して密室状態は避けた方が無難です。かつて問題のある部下への配慮から個室で穏やかに諭したにも拘わらず、突然泣き出されてしまし部屋から飛び出してしまいました。あとで部下からセクハラがあったなどの事実無根の訴えがあっても誰も見ておらず後の祭りとなります。

 
事務所より一言

言葉は時代を語るといいますが、まずは次の短文をお読み下さい。

「先日、ガールフレンドと手をつないでアベックで散歩中、向かい側から、肌が透き通るようで、灰色の目をした美しい女性が乳母車を押して通り過ぎました。ソ連のお国の方ではないかと思わず見とれておりましたら、彼女から思い切りお尻をつねられました。そして、「アタシそろそろ髪の切り時なの」という彼女と、お気に入りのパーマ屋で分かれましたが、小腹が空いた感じがしたので、国鉄で一駅先のお好み焼き屋に足を運びました。行列が出来るほどその店が繁盛しているのは、新鮮な卵や海鮮類、そして上質のメリケン粉を使っているからだとの評判です」

ここまで読んでこられて、何ら違和感がない方はおそらく私と同じように、昭和時代にどっぷりと人生を送ってこられた方と思います。一方、なにこの文章???・・・と思われた方は、ヤングジェネレーションの方に違いありません。

実は、上記の短文は、マイナビウーマンという雑誌の最近号「年代を感じる昭和な名詞」アンケートのベスト5と番外1を織り込んで私が作文したものです。同じものを示しているのに、呼び方は変化してしまう、しかし一度見にしみ込んだ言葉は体から離れない、それは年代に拘わらず今後も誰にでもあることであり、とても面白い調査と感じました。

因みに「年代を感じる昭和な名詞」のランキングと今の呼び方は次の通りです。1位アベック(カップル)、2位乳母車(ベビーカー)、3位パーマ屋(美容室・ヘアサロン)、4位メリケン粉(小麦粉)、5位国鉄(JR)、番外ソ連(ロシア)。この他番外にも、レコード店(CDショップ)、汽車(電車)、旗日(祝日)など懐かしい名前がでております。

最初の短文を現代風にアレンジすると次の通りになります。
「先日、ガールフレンドと手をつないでカップルで散歩中、向かい側から、肌が透き通るようで、灰色の目をした美しい女性がベビーカーを押して通り過ぎました。ロシアのお国の方ではないかと思わず見とれておりましたら、彼女から思い切りお尻をつねられました。そして、「アタシそろそろ髪の切り時なの」という彼女と、お気に入りのヘアサロンで分かれましたが、小腹が空いた感じがしたので、JRで一駅先のお好み焼き屋に足を運びました。行列が出来るほどその店が繁盛しているのは、新鮮な卵や海鮮類、そして上質の小麦粉を使っているからだとの評判です」

あなたはどちらの短文に親近感を覚えるでしょうか。

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